12月1日(土)講座⑥ワークショップでつくる学びの場(講師|舘野泰一 立教大学経営学部助教)

2018年12月01日

この日の講座は、
ワークショップをつくるための基礎的な知識や方法論を学ぶということで、
立教大学より舘野泰一さんをお招きしました。
舘野さんは、大学時代は教育を専門に、
大人がどう学ぶのかについて研究されていました。
そして現在は立教大学経営学部にて、
大人が学び、新たなものの見方を得る為には
どのような場のデザインが必要なのかについて、実践的に研究されています。
立教大学では「Business Leadership Program」と題して
企業とコラボレーションしながら、リーダーシップに関するプログラムを展開されています。

今回の講座に臨むにあたり、アートコミュニケーターのみんなは
事前課題に取り組んでいます。
課題は舘野さんの著書
「アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ」から
出されました。

今日一日をかけて、主にこの2点について学んでいきます。
〇ワークショップデザインの基礎
〇ワークショップの伝え方

 

まずは、「遊び」と「学び」という言葉について考えるところからスタートです!

それぞれが「学ぶ」から連想することと、
「遊び」から連想することを考え、それぞれグループで共有しました。

 

 

ワークショップと一言で言っても、
子供向けや製品開発、鑑賞に関するものなど様々なものがあります。
舘野さんからは、どのワークショップにも共通している設計のポイントは、
「遊び」と「学び」の要素が両立し、上手にブレンドされていることだ
というお話がありました。

 

次に、事前課題を使ったワークを行いました。

【事前課題1】は、
3つのワークショップの事例から、1つの資料について読み込み、
当日「この資料を読んでいない人」に対して、
口頭で(5分以内を目安)ワークショップの内容を説明できるようにしておく
というものでした。

<ポイント>
・ワークショップの基本構造とはどのようなものだろうか?
・ワークショップを設計する上で学びになったポイントはどこか?
・このワークショップでは「どんな人に、どのような体験をしてもらい、どのような学びを得てもらいたい」と考えているか。そのために「どのようなデザインの工夫」をおこなっているか?

この3つのポイントについて、
それぞれが担当しているワークショップについて自分なりに解説し、
他のメンバーは、それぞれのワークショップがもつ共通点について
考えながら聞くというワークを行いました。

 

 

 

 

その後、一見全然ちがう3つのワークショップに共通する設計のポイントについて、
グループごとに模造紙に整理しました。

 

 

 

ワークの後は、舘野さんからの解説です。

3つのワークショップに共通する5つのステップや、
学びと遊びの構造、
ワークショップでの学びがその後の日常に残っていくような工夫を考えること、
また、体験と振り返りの重要性について分かりやすく解説していただきました。

午後からは実際にワークショップを体験し、さらに理解を深めていきます!

 


 

3つの課題の中のひとつ
【カードdeトーク いるかも !? こんな社会人】を実際に行ってみました。
11枚のカードの中から「この人とは働きたくない人」、
また 「一緒に働いてもいい人」をそれぞれ直感で3人選び、
選んだ理由をグループ内でシェアします。

このワークを通じて、参加者は
自分の仕事に対する価値観について考えていきます。

 

 

「せーの」で一斉にカードを指さすたびに、笑い声が響きます。

カードの中の人物像を、同僚と捉えるか、
部下と捉えるか、はたまた上司なのかで選び方が変わります。
また、アートコミュニケーターの中には学生もいれば社会人や主婦の方もいます。
それぞれの立場や職種によっても差があり、
他の人の価値観を知る面白さに大変盛り上がりました。
また、今まで気が付かなかった自分の仕事への価値観に
ハッとした人も多かったようです。

 

 

その後、このワークショップがどのような狙いのもとつくられたのか、
どのような企画会議からこのワークが生まれたのか、
WSを作るうえで、重要なポイントを事例を交えながら解説いただきました。

 

その後は、【事前課題2】について取り組みました。

事前課題2の内容は、
「あなたがもしワークショップをデザインするとしたら
どのようなものを作りたいと思いますか?」
というものでした。

グループ内で各々が考えてきた内容を共有し、
今日学んだことを活かすとそれぞれのプランは
どう発展できるのかを話し合いました。

 

その後は、ワークショップ設計の復習として、
アイスブレイク、メインワーク、振り返りのポイントについて
まとめていただきました。

その中で、ワークショップ上達のポイントは、
とにかく自分たちで試してみることだとアドバイスをいただきました。
なんとなくWSの構成ができたら、
何回も何回もやってみることで学びと遊びのバランスを考え、
少しずつワークショップを完成させていくようにすると良いとお話がありました。

 

続いては、ワークショッププログラムが完成した後のことについても
お話いただきました。
実際にプログラムを行うときのファシリテーションのコツと
完成したワークショップを実施する為に
企画の伝え方について学びました。

そして最後に今日学んだ全体の内容についてグループごとで振り返り、
アートコミュニケーターたちから舘野さんへの質疑応答で
今日1日の講座を終えました。

今日の講座は、今後のアートコミュニケーターたちの活動に直結する
大切なポイントが詰まったお話ばかりでした。

これから日常のいろいろなことが
ワークショップの素材に見えてきたり、
日々の色々な場面で今日の講座の内容を思い出すのではないかと思います。

今日の講座がどう活かされるのか、
今後の活動が楽しみです!

 

(アートコミュニケーション事業担当 渡部)

 

カテゴリー:

11月10日(土) 講座⑤対話型鑑賞サポートに挑戦

2018年11月10日

「さっぽろアートステージ2018」関連事業として、11月23日(金・祝)に行う
SCARTS アートコミュニケーターによる【対話による鑑賞サポート】に向けて、
当日の活動に参加するメンバーが練習を開始しました。

今まで講座を重ねてきたアートコミュニケーターたちですが、
今回の【対話による鑑賞サポート】がデビューとなります。
みんな、楽しみと緊張とが入り混じりながらも
本番に向け、真剣な表情が印象的でした。

 

まずは講座③で、山崎先生が実際に
「対話による鑑賞」のファシリテーターを行ってくださった際の
映像を見返すところから始めました。
これから自分たちが実践する立場になって確認すると、
また違った視点で見ることが出来たのではないでしょうか。

そして、山崎先生が使っている言葉や振舞い方に注目し、
その効果についてみんなで話し合いました。

・ニコニコしている。
・話題にあがっている箇所を指差ししてくれるので、注目できる。
・ひとつひとつの言葉にうなずいてくれるので、話しやすい。
・発言をまとめてくれたり、言い換えてくれる。
・発言に対して評価をしていない。
・どの発言も面白がって聞いてくれる。
・アクションが大きい

など、沢山の気づきがありました。
どの要素も「対話による鑑賞」をおこなう上で大切なポイントです。

 

前回の講座で、アーティストの方々から作品の意図や制作について
インタビューを行っていることもあって、
アートコミュニケーターたちの中には
「作家の意図を伝えたい」という意見の方もいらっしゃいました。
この発言から、「対話による鑑賞」の目的や、
今回の実践活動をどのような場にしていきたいのかという、
とても大切な議論にまで発展しました。
本質的なことを考えるよいきっかけとなりました。

 

次に、それぞれ担当する作品ごとに分かれ、
鑑賞者からどんな言葉が出てくるのかを想定し、
○目で見て気が付いたこと
○感じたこと
を付箋に書き出し、言葉を結び付けたり、関連付けたりして整理しました。
ここでは、前回の講座④でそれぞれが作った作品鑑賞メモが参考になりました。

その後、それぞれのワーク内容をグループ内で共有することで
新たな発見も得られました。
この作業を通じて、
鑑賞者からどんな言葉が飛び出しても受け入れるための準備を整え、
本番に向け実践練習に入っていきます!

 

 

ついに実践練習の開始です!

アートコミュニケーター同士が小さなグループになり、
ファシリテーターと鑑賞者、そしてその場を客観的な視点で見るコーチ役となって
小さな実践と振り返りをセットで繰り返しました。

上達の鍵は「実践練習」と「振り返り」です!
たくさんの実践と、対話の中で起きていることを振り返り、
仲間同士で意見交換をし、改善策をともに考えていきます。

 

この講座が本番前最後の講座になります。
ここからは、アートコミュニケーターたちが自主的に集まり
練習を重ねていきます。

「実践」と「振り返り」を繰り返しながら、
互いに意見を出し合い、自分たちの活動をつくっていきます。
この積み重ねが、
当日の鑑賞の時間を豊かにしてくれるはずです!

 

(アートコミュニケーション事業担当 渡部)

 


<お知らせ>

SCARTSアートコミュニケーター 「対話による観賞」

「見る・考える・話す・聴く」という4つの要素を基本に、アートコミュニケーターや他の鑑賞者と対話を通して楽しく作品鑑賞をおこないます。途中からでも途中まででもご参加いただけます。
作品解説や音声ガイドとはまったく違う「対話による鑑賞」、是非体験してみませんか?

11月23日(金・祝)
①10:00~11:00  ②11:15~12:15
③14:00~15:00  ④15:15~15:15

 


 

 

 

 

 

 

カテゴリー:

10月27日(土) 茶話日

2018年11月02日

これまで3回の講座を一緒に受講してきた仲間に対し、
もっと仲良くなりたい、知り合いたいという
思いが強くなってきた頃かと思います。
そんな時期だからこそ、
仲間を知るためのミニワーク【他者紹介】を行いました。

この日は事前に、
「自分を形づくるモノをもってきてください」と
お願いしています。

 

2人組になり、
それぞれ持ち寄った「自分を形つくるモノ」を使って
互いに自分のことを話します。(10分)

 

人形やレコード、本やポスター、自作の家計図、
その場で珈琲を淹れてくれる方まで…本当に様々なモノが集まりました。

 

そして、自己紹介で聞いた相手の情報をもとに、
【他者紹介】として、ペアの相手についてプレゼンを行いました。(3分)

 

【他者紹介】での3分間のプレゼンは、
続きを聞きたい、もうちょっと知りたいという、
みんなの興味を掻き立てたようで、
その後の茶話会では、珈琲やお菓子をいただきながら
興味をもったモノや相手との話が弾みました。

今日は茶話日ということで、
自由参加の日でしたが、
20名以上のアートコミュニケーターが参加し、
活動に関する意気込みを感じました。

【他者紹介】では、聞き手は話し手から得た情報を、自分の言葉で表現します。その人が本当に言いたかったことをすくい上げる力が試されます。アートコミュニケーターたちの聞く力、受信する力がここでも活かされました。

 

(アートコミュニケーション事業担当 渡部)

 

 

カテゴリー:

10月20日(土) 講座③作品を鑑賞するとは? (講師|山崎正明 北翔大学教授)

2018年10月22日

SCARTSアートコミュニケーターの活動の1つとして、
「鑑賞者との対話を通して、作品との出会いの入り口をつくります」とあります。
https://www.sapporo-community-plaza.jp/artcommunicator.php

 

11月23日(金・祝)の実践活動①「対話による観賞」に向け、準備開始です。
舞台は、11月に開催される「さっぽろアートステージ2018」です。
ついに、SCARTSアートコミュニケーターたちがプレイヤーとしてデビューします。

今回の講座では、【作品を観賞するとは?】と題して
山崎正明先生(北翔大学教授|https://yumemasa.exblog.jp/)から
実践活動①「対話による観賞」のファシリテーターとして
活動するための心構えやテクニック、
そして何より、この活動を行う為の核となる
その意義や魅力、面白さについて、
レクチャーと体験により立体的に学びます。

 

「対話による観賞」は、美術館で行われているような
学芸員や作家の解説を聞いたり、一方的に説明を受ける
観賞サポートではありません。
ファシリテーターや他の観賞者と共に、
1つの作品をじっくり見て、語り合いながら、
新たな発見や気づきを共有することで主体的に観賞を深めていく手法です。

そういいつつも、
作品の背景や作家の意図や思いをといった
作品の情報を伝えない観賞サポートに対し、
まだ戸惑いのあるアートコミュニケーターたちでしたが、

山崎先生の
「作品は見る人がいなければ単なる物質にすぎない」
「見る人が作品をつくる」
という言葉が、
みんなの背中を押してくれたように見えました。

 

お話しを伺った後、
山崎先生が中学生たちと共におこなった
「対話による観賞」の授業映像を見ました。
中学生たちがどんどん絵の世界に入り込んでいき、
細部について注目し、想像力を働かせ発言していくようすが印象的でした。

そして少し休憩を挟み、
ついに、山崎先生のファシリテートをもとにアートミュニケーターたちが
実際に「対話による観賞」を体験。

アートコミュニケーターたちからの発言に対し、
山崎先生が本当に楽しそうに耳を傾け、
「なるほど、そう見えますね。面白いな~」と優しく声をかけてくださるので、
どんどん意見や感想、発見についての発言が飛び交い、
笑い声と共に対話が盛り上がりました。

 

その後は、山崎先生の体験談を聞きながら、
ファシリテ―ションのポイントについてまとめました。


〇一人でじっくり作品を見る時間をつくる

〇よく聞く(受容 ・ どの意見も受け入れる)

〇 開かれた問いを投げかける 「何が見えますか?この絵の中で何がおこっているか、気がついた事を聞かせてください」

〇 根拠を問う 「作品のどこからそう思いましたか?」

〇 発表をつなげる (観賞者同士の発言を関連づける・対比させる)

〇 発表を広げたり、深めたりする 「他にもっと発見はありますか?」「~に関連して他にありませんか?」

〇 途中で対話の内容を整理しながら進める(まとめる ・ 色や風景、人物など、いままでの発言をまとめて言いかえる)

〇 指名しながら進めないことを基本とする(指名すると発言が並列で終わってしまう)

〇 オープンエンド(最後にまとめなくてよい  ・ 「実はね・・・」ファシリテ―ターの作品の見方を通して理解するようなまとめは、今までの対話を前座にしてしまう)


 

午前中のレクチャー後の質問タイムでは、
作品の選び方や、
作者の意図や作品の背景などの情報の扱いについてなど、
沢山の質問が飛び出し、話しが止まりませんでした。

 

午後は2組に分かれ、午前中に学んだことをもとに、
実際に「対話による観賞」のファシリテーターを実践しました。
(1人15分程度)

 

「まずは見てみましょう」と声をかけ、
一人でじっくり作品と向き合う時間(1分)をつくります。
そして、「何が見えますか?気がついたことを聞かせてください」と
観賞者へ開かれた問いを投げかけ、対話が始まります。

 

ファシリテーターとして前に立つアートコミュニケーターも、
観賞者として参加するアートコミュニケーターも、
夢中で絵を見て、仲間の話しに耳を傾け、考え、発言することで、
「対話による観賞」における重要な要素、【見る・考える・話す・聴く】を体験できました。

 

観賞後は、一人ひとりのファシリテ―ションについて
山崎先生からポジティブなアドバイスをいただきました。

 

見ているのと実際にやってみるのでは、印象が違ったかもしれません。
しかし、ファシリテーターを体験してみて、
観賞者の意見を聞き、言葉をつなげていくことで
人同士のつながりが生まれていく場づくりに
魅力を感じたメンバーが多かったようで楽しそうです。

 

山崎先生のお話の中で、
「対話による意味生成的な観賞」という言葉が、
とても印象に残っています。
参加してくれる観賞者の方々にとって、
また、ファシリテーターを務めるアートコミュニケーターたちにとっても
それぞれにとって意味や価値を生み出せる時間が
共有できたらと思いました。

(アートコミュニケーション事業担当 渡部)

 


<お知らせ>

SCARTSアートコミュニケーター 「対話による観賞」

「見る・考える・話す・聴く」という4つの要素を基本に、アートコミュニケーターや他の鑑賞者と対話を通して楽しく作品鑑賞をおこないます。途中からでも途中まででもご参加いただけます。
作品解説や音声ガイドとはまったく違う「対話による鑑賞」、是非体験してみませんか?

11月23日(金・祝)
①10:00~11:00  ②11:15~12:15
③14:00~15:00  ④15:15~15:15

 


 

 

 

 

 

カテゴリー:

9月22日(土) 講座②アートってなんだろう? (講師|佐藤悠 アーティスト)

2018年09月25日

講座②では、「アートってなんだろう?」と題して
アーティストの佐藤悠(さとうゆう)さん(https://www.yusatoweb.com/)
をお招きしました。

佐藤さんは、何も無いところから、誰かが関わる事で表現が紡がれてゆく現場を作りだすアーティストです。主な活動に、直径3m の「ゴロゴロ」と呼ばれる竹製の球体に佐藤さんが搭乗し集落の頂上から麓まで転がり下りる【ゴロゴロ莇平】、1枚の紙に絵を書きながらその場にいる全員で即興で物語を作る「いちまいばなし」など、そこに関わる人々から自然発生的に起きる行いを取り込みながら表現活動を継続されています。最初の自己紹介では、いままで行ってきた活動とあわせて、場と関係性の中で行う表現や、そこで巻き起こる事柄を積み上げていく過程を価値ととらえる表現が抱える課題について語られました。佐藤さんがアーティストとして、「現場」を共有していない人へ、その表現の価値をどう伝えていくのかを課題とし、そこから表現を伝えることより、伝えることを表現にしようと考えるようになった過程について、丁寧にお話しいただきました。最近は美術館での観賞プログラムにも表現の幅を広げているとのことで、その理由として、「受信」側に興味があると仰っていたのが印象的でした。

 

佐藤さんの活動紹介の後は、
ついに、【知ったかアート大学】が札幌で初開講です。

【知ったかアート大学】は、2016年より各地で開催されているアート講座です。
多くの人にアートを自分の力で楽しむ観点を広めることを目的とし、
中学校や高校、地方の造形教室や子育てサークルのイベントなど、
開講場所は決してアートに関連した施設だけではありません。
佐藤さんの特徴でもある軽快なトークとアーティストならではの目線で、
アートの歴史や成立の背景を≪ザックリ≫と解説することで解き明かし、
いつの間にやらアートってこんなもんなんだと、
≪知ったかぶり≫になれるプログラムです。

 

今回の講座では、洞窟壁画からアートプロジェクトまで<近代以降・近代・現代・現在(+日本のアートプロジェクト・芸術祭)>の約2万年のアートの歴史をざっくりと把握する1限目として、とても怪しげな風貌の「開木名折教授」の授業を受けました。社会の流れと共に変化してきたアートの歴史を、軽妙なトークとパフォーマンス、アートコミュニケーターを巻き込んでの寸劇などを交えながらの、あっという間の2時間でした。

美術史を大胆に編集し、
テレビ番組のバラエティーでも見ているような気にもさせるエンターテイメント性は、
アートやアーティストという存在を崇高なものとして扱わないという
メッセージが込められているようにも感じました。

講座後の質問の時間には、
アート呼ばれるものとアートとは呼ばれない、たとえばお祭りなど(文化)の違いについてや、芸術祭の今後についてなどといった質問が飛び交いました。

 

午後からは、事前に出されていた課題を使ってのグループワークをおこないました。

課題は、

 


札幌にある作品 イサム・ノグチ≪ブラック・スライド・マントラ≫(大通公園8丁目)について調べ、ある特定の親しい人(家族、親類、友人、恋人等)に向けて語ることを想定して、その作品について調べ、伝えたいことや、その伝え方についてA4用紙1枚程度で自由に表現してください。


 

という内容でした。

この課題では、≪ある特定の親しい人≫をどのくらい具体的にイメージできるかがポイントです。アートコミュニケーターたちそれぞれの≪ある特定の親しい人≫が、どんな物なのか、年齢は?性別は?趣味は?興味のあることは?どんな言葉使い?自分との関係性は?について考え、イサム・ノグチの作品≪ブラック・スライド・マントラ≫についての情報をどう編集し、相手に伝えるのかを考えることが課題です。

他者に対する視点や、相手を受信する力は、自分たちで企画を立てるときや、プレーヤーとして参加者と関わるときなど、アートコミュニケーターとして活動をおこなっていく上で重要なことです。

佐藤さんから、コミュニケーションは「キャッチボール」。受け手(聞いてくれる人)がいるからコミュニケーションが成り立つ。しかし、投球をコミュニケーションと思っている人がいる。受け手のことを考え、どんな球を投げたら相手は受け取ることができ、またその球が投げ返してくれるのか。調べたこと、知っていることを全て言いたいという気持ちをぶつけるだけでは、コミュニケーションの場は作れないといったようなアドバイスがありました。

 

事前課題をおこなうにあたり、 イサム・ノグチ≪ブラック・スライド・マントラ≫について、アートコミュニケーターたちは、本、WEB、人に聞いた、行った、すべった、想像、過去の経験など様々な方法でリサーチしてきたようです。課題の用紙は文字でビッチリでした。

そのリサーチした内容を、どんな相手にどう使えるのか…それぞれの事前課題の内容についてグループで共有し、面白い視点や発見について話し合うグループディスカッションの開始です。(グループディスカッション:45分)

 

共有の終わったチームから、後半のグループ発表に向け、シェアした内容を模造紙にまとめていきます。

 

受け手をどのくらい具体的にイメージできているか…調べること、情報を集めることにとらわれてしまったメンバーもこのグループワークを通して課題の主旨について考えることができたでしょうか?

 

グループワークの後は、グループごとにプレゼンテーション(各5分)をおこないました。遊具である特徴や、その形を「黒いロールケーキ」や「胎内めぐり」と表現してみたり、大通公園にあるという立地を活かしたり、ちょうど開催されていたさっぽろオータムフェストを興味のきっかけに使う案、ツアー形式の長期的なプランなど様々な伝え方がありました。

中には、「のぼってちゅるん」など、その一言で、伝える相手やその関係性までも想像できてしまうようなアイデアもあり、伝え方の多様な在り方を感じました。

 

母親同士が親子の思い出を語り合う設定や、閉店間際の居酒屋でマスターや女将、酔っ払いたちの駄弁りのシチュエーションで作品を語り合うなど、グループ発表にも工夫がありました。

 

互いのグループ発表を聞き、なるほどこういう発想もあるのかと、「伝える」の可能性を感じることが出来ました。

相手の状況や興味、場の設定との関係性を考え、伝えたい気持ちを自制し、伝えるために、情報を切り捨て、自分が伝えたいことや知っていることを整理し、編集していくことは簡単なことではありません。そのためには、発信、受信、また、それを客観的にみる視点を想定してみることが大切です。

今回の講座では、これからアートコミュニケーターとして活動を行う上での、重要な視点について確認することが出来たのではないでしょうか。

(アートコミュニケーション事業担当 渡部)

 

 

 

 

 

カテゴリー:
1 2 3