HOME2018年9月1日(土)講座①仲間を知ろう(講師|納谷真大 俳優・演出家)

2018年9月1日(土)講座①仲間を知ろう(講師|納谷真大 俳優・演出家)

2018年09月05日

2018年7月、書類選考・面接を経て、「SCARTSアートコミュニケーター」として活動していく30名余りのメンバーが決定しました。
8月16日にオリエンテーションを終え、第1回目の講座は「仲間を知ろう」をテーマに、俳優・演出家の納谷真大(なや まさとも)氏を講師にお迎えして実施しました。
メンバーはまだ顔も名前も一致せず、年齢、職業、バックボーンもさまざま。
これから活動を共にしていくための基盤づくりとして、お互いのことを知るために、演劇の手法を用いたコミュニケーションワークショップに取り組みました。

 

まずは、「名札」をつくるところから。ガムテープにマジックで字を書き、身体に貼り付けます。ただし、書くのは自分の「名前」ではなく、10文字の「自分を表す言葉」。単なる記号としての名前ではなく、10文字のなかで、自分のパーソナリティを表現します。相手の胸に付けられた短い言葉を通して、その人に対する「イマジネーションをふくらませる」ということが、「コミュニケーションの第一歩」であると納谷さんは言います。

各々「名札」をつけたところで、納谷さんが俳優という生業を通じて考えてきた「コミュニケーション」についてお話しいただきました。
まず、俳優は「嫌いな人」をつくれない、というお話から。誰かを嫌いと思うと、その人の役を演じることができなくなる、嫌だと思ってもシャットアウトせず、相手の思考を分かろうとすることが自分の視野を広げる、とのご発言に納得。
また、コミュニケーションにおいては「発信」よりも「受信」が大事、とのこと。役者の仕事でも、自分が望む演技を相手に求めるのではなく、自分が相手の演技を受け取って、過不足なく反応する、ということが大切なのだとか。相手を受けとめるキャパシティを持ち、相手が何を思っているかをとらえるところからコミュニケーションは始まる、そういう意味では、「おしゃべりな人=コミュニケーションの達人」というわけではない、ということが語られました。

 

さて、ここからはワークショップに入っていきます。

まずは「歩く」ことから。今いる部屋の「空間全体を埋める」という「目的」を持って、全員でスピードを保ちながら止まらずに歩きます。ここでは俯瞰的に「状況を把握する」力を発揮しなくてはなりません。
次に、すれ違った人とアイコンタクトをとって手のひらをタッチし、「こんにちは」と挨拶します。ここでゆるやかな「人間関係」が構築されていきます。さらに、「納谷王国」の住人になったつもりで、挨拶は納谷語で「○○○」と言う、2回目の挨拶は「×××」と言う…など、ミッションが増えていきます。そうすると、複数のミッションを間違えずに行うために必死になって、「空間全体を埋める」という最初の目的がすっかりお留守に…
同時に複数のミッションを課せられ、頭をフル回転させながら、人と良好なコミュニケーションを築くことを試みるワークショップです。

 

このあとは、納谷さんからの指示で止まったり歩いたりする「ストップ&ゴー」、言葉を使わずに5人組をつくったり、図形をみんなで作り出すワークショップ、2人1組でドライバーと車の役をする「2人でドライブ」を実施。
言葉を使わないワークショップでは、誰かが言葉で指示すれば簡単にできることを、みんながまわりの人を動きを見て、全体を捉えながら、達成していきます。1人の「リーダー」が仕切らなくても、全員がお互いのことを視野に入れながら物事が動く状態をつくる、このフラットで思いやりのある関係性は、今後のアートコミュニケーターの活動においてもきっと大切になってくるでしょう。

ここまでで午前の部は終了!
みんなで一緒に頭と体を使い、すっかり気持ちもほぐれた様子でした。

午後の部は「21ゲーム」から。
10名余りのグループに分かれて、「最低一人ひとつ数字を言う」ということを条件に、各々がタイミングを見計らって1から21まで一人ずつ数えていく、というゲームです。複数人が同時に数字を言ってしまったらアウト、です。

 

「いちッ!」と最初に積極的に言う人、みんなに譲ってなかなか言わずに、終盤でぼそっとつぶやく人など、メンバーの個性が如実に表れ、それを納谷さんが的確に指摘するので、回りで見ているチームも笑いが止まりません。

 

「自分が最低ひとつは数字を言う」というミッションを持ちながら、他者との折り合いをつけて、全体の気配を読みながら自分の発声の機会を伺う、ここでもやはり求められるのは「受信力」でした。

 

続く「3の倍数ゲーム」「言葉の連鎖ゲーム」も大盛り上がり。
最後は「ずいずいずっころばし」を歌いながら隣の人にマジックペンを渡していくゲームを全員で。一定のリズムながら、時々逆回転が入るので難しく、ちょっとした受け渡しのスピードなどで、得意な人が苦手な人をカバーしながら達成しました。

 

最後に、もう一度「2人でドライブ」を行い、パートナーを10字以内の言葉で表現して終了です。ワークショップに一緒に取り組んだことで、それぞれパートナーの長所がよく見えたようでした。

 

納谷さんの巧みな「突っ込み」もあって、まだ名前も知らないメンバーなのに「おっちょこちょいさんだな」とか「控えめな方なんだな」とか、それぞれのキャラクターが見事に伝わってきてしまうことにみんな思わず笑ってしまいつつ、アートコミュニケーターが多様な個性をもつメンバーの集まりであることがあらためて実感できたのではないかと思います。
また、自分が何か発信することがコミュニケーションなのではなく、仲間の個性や思考を受信することこそがコミュニケーションを開くのであり、個人ではなくチーム全体として目的の達成のために動く、ということの大切さを意識させられる講座となりました。たくさん体を動かし、たくさん笑い、メンバー同士の距離が縮まった一日でした。

(アートコミュニケーション事業担当 樋泉)

 

 

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