【Creative Opera Mix Vol.2】髙橋秀典氏インタビュー

Creative Opera Mix Vol.2 LOVE & TRAGEDY

札幌市民交流プラザ3Fクリエイティブスタジオ
オペラその他特集音楽

2021 03/13

2021 03/14

UP:2021/03/12

オペラというと、敷居が高い伝統芸能だと感じる方もいるのではないでしょうか。そんなイメージを一新させるのが、札幌市民交流プラザで開館時から開催されている『Creative Opera Mix』です。オペラ歌手はもちろん、ダンサーやピアニスト、そしてDJやバンドマンまで、異色な組み合わせの表現者が札幌中から集い、一緒になってステージを繰り広げます。仕掛け人は、札幌文化芸術劇場hitaruでチーフプロデューサーの髙橋秀典氏。キャスティングや予算、情報発信等を統括する役割に加え、独創的な発想で事業をプロデュースしています。SCARTSアートコミュニケーターは、この斬新な企画の狙いを探るべく、髙橋氏にインタビューを行ないました。


Creative Opera Mix Vol.2 LOVE & TRAGEDY
<日時>
・3月13日(土) ①開演15:00 (開場14:00)②開演19:00 (開場18:00)
・3月14日(日) 開演15:00 (開場14:00)

<会場>
・クリエイティブスタジオ(札幌市民交流プラザ3F)

※チケット完売※

【オンライン配信決定!】
3月13日(土)・14日(日)に行われるCreative Opera Mixの本番の様子が、インターネットでアーカイブ配信が実施されることが決定しました!。詳細は以下のURLをご参照ください。
https://www.sapporo-community-plaza.jp/event.php?num=1731


・インタビュー日:2月2日(火)、札幌市民交流プラザにて
・参加者:大澤、柏原、佐々本、杉谷、田中、鶴羽、中川、長谷川、平原、山際(SCARTSアートコミュニケーター)


札幌ならではの人選で、札幌ならではのオンリーワンの事業を全国に発信していきたい

長谷川:Creative Opera Mixでは、『カルメン』のような古典的なオペラの曲目にロックやヒップホップなどの要素を取り入れ、現代風にアレンジしていますね。札幌市民交流プラザがオペラに力を入れている背景と、そのオペラをアレンジしようと思った理由を教えてください。

髙橋:Creative Opera Mixの狙いは、オペラの魅力をより幅広い方々に知っていただきたいというものです。壮大な舞台美術や、オーケストラ、沢山の出演者によるオペラ公演は魅力にあふれたものになりますが、反面、制作費が高いことから同時にチケットが高くなってしまう側面もあります。そこで、より気軽に会場に足を運んでもらえるようにチケット代を下げ、広くオペラの魅力を伝えていきたいということで立ち上げました。

札幌市民交流プラザの中には、客席数2,302席の大きな劇場(札幌文化芸術劇場hitaru)があります。オーケストラピットや4面舞台(※1)など、全国の他のホールと比べてもかなりレベルの高いオペラの上演設備を備えた「高機能ホール」と呼ばれるものです。これを活用し、札幌市民交流プラザでは開館した2018年以来、『アイーダ』や『白鳥の湖』など、グランドオペラや大規模なバレエ公演を開催してきました。

しかし、こうした大規模公演は非常にチケットが高い。ものによっては数万円もするチケットとなると、若い人たちにはなかなか手が出ないですよね。そもそもオープンの直後は公演の人気も高く、チケットも取れない状況が続きました。hitaruでオペラを観た方は皆さん口を揃えて「すごい」「鳥肌が立った」という声を寄せてくれたのですが、Creative Opera Mixではこの魅力を新しい形で伝えていきたいと考えています。

髙橋秀典氏

 

鶴羽:JAZZ、DJ、ダンス、そしてオペラと、異色のものを組み合わせていますね。出演者の人選はどのように行なったのですか?

髙橋:札幌ならではの人選で、札幌ならではのオンリーワンの事業を全国に発信していきたいということを考えました。Creative Opera Mixの制作は、フリーのソプラノ歌手の川島沙耶さん、ピアニストで作編曲家の福由樹子さん、クラブDJとして活動するDJ TAMAさん、そしてダンサーのSHOKOさんと僕や舞台監督といったチームで取り組みました。全員が、札幌の文化芸術シーンの第一線で活躍しています。

福さんは、以前に僕が運営に関わっていた「サッポロ・シティ・ジャズ(※2)」で何度もステージを見ていて、クラシックもロックもフュージョンも演奏できるし、アレンジ力もすごいと感じていました。TAMAさんも、北海道では一番の実力を持ったDJです。

あとはSHOKOさんですね。キレのある踊っている姿がもう「カルメン(※3)」そのものなんですよね。Creative Opera Mixで『カルメン』をやると決めた時に、一番最初にSHOKOさんが頭に浮かびました。誰に歌ってもらうかと考えた時に川島さんが浮かんだのも、「カルメン」のイメージです。SHOKOさんが少し悪いカルメンだとしたら、川島さんは清楚なカルメン、というイメージです。「カルメン」というひとりの人物の二面性を表現できればと考えました。

 

©︎定久圭吾(doppietta)

バンド演奏をバックにダンサーが踊る難しさ

鶴羽:異色のものを組み合わせる上で、一番大変だった部分はどのようなことでしょうか。

髙橋:違ったバックグラウンドを持つ人たちと一緒に楽曲をアレンジしたり、曲の完成後の振付、合わせリハーサル等、膨大な作業が必要です。

企画を思いついた段階で、SHOKOさんとTAMAさんの組み合わせで『カルメン』というオペラをアレンジする、という大まかなイメージが僕の中にありました。しかし、いざ楽曲のアレンジの段階になるとそう簡単にはいかないんですよね。そこで、編曲を福さんに依頼しました。「この部分はロック、この部分はジャズ」といったように大きなイメージを僕が考えて福さんに伝え、それでできあがった楽曲にTAMAさんが味付けをしていく。こうしたプロセスをたどるので、音楽を作るのがまず大変でした。

楽曲ができた後の調整にも時間がかかりました。例えば今回出演するダンサーは普段は録音した音に合わせてダンスをしています。でも今回は生バンドの演奏に合わせますよね。そうすると、曲のアレンジでテンポが変わるとダンスが成立しなくなるんです。極端に言えば、ジャンプで空中に浮いている時間は制御できない。そういう時に曲のテンポが変わっていると、下りるタイミングが違ったりしてしまうんですよね。こうした秒単位の調整を練習が終わったあとに行うので、打ち合わせが夜11時とか12時までかかることもありました。

ただ、こうした新しい組み合わせによる相乗効果や、それぞれの潜在能力が引き出されることで生まれるパワーも強く感じました。例えば川島さんはソプラノ歌手ですので、全然キーが違うロックの曲を歌えるのかわからなかったのですが、やってみるとできてしまった。あるいはSHOKOさんも、普段はクラブミュージックで踊っている人なのですが、今回の企画のために色々な『カルメン』を見てくれたんですよね。それを自分の中にインストールしていって、SHOKOさんならではの「カルメン」に仕上げてくれました。「この曲はもっとスピード感があった方がかっこいい」「この曲はヒップホップにした方がかっこいい」とダンサーからも意見があり、アレンジを変化させたりもしました。今回集まった4人は全員が既に第一線で活躍している素晴らしいアーティストですが、これまでにはないポテンシャルを引き出すこともできたのではないかと思います。

練習の様子

 

(2ページ目に続く)


※1:オーケストラピットや4面舞台
どちらも、オペラ上映のための大規模な舞台機構。前者はオーケストラが演奏をするためのスペースで、舞台前方の一段下がった位置に設けられる。後者は舞台の構造のことで、客席から見える主舞台のほかに、同じ大きさのスペースが舞台の左右と奥にある構造を指す。

※2:サッポロ・シティ・ジャズ
2007年から札幌で開催されているジャズフェスティバル。大通公園に設営するミュージックテント(2017年まで)や、札幌芸術の森野外ステージ、札幌市民交流プラザなど、札幌市内の各所でジャズに関する催し物を行う。
https://sapporocityjazz.jp/

※3:カルメン
作曲家。ジョルジュ・ビゼーによるオペラ作品、およびその登場人物の名前。作中では、カルメンとドン・ホセの愛憎劇が繰り広げられる。

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