【Creative Opera Mix Vol.2】髙橋秀典氏インタビュー

Creative Opera Mix Vol.2 LOVE & TRAGEDY

札幌市民交流プラザ3Fクリエイティブスタジオ
オペラその他特集音楽

2021 03/13

2021 03/14

UP:2021/03/12

オペラの魅力を伝えるための様々な取り組み

柏原:Creative Opera Mixのポイントのひとつは「若年層のファン獲得」かと思いますが、実際にはどの程度若い方が来ているのでしょうか。

髙橋:昨年行なった1回目のCreative Opera Mixでは、観客のうち10代から30代の方の割合が17%でした。その直前に公演した『トゥーランドット』という演目では、10代から30代の割合は8%ですから、単純に倍の数字です。

Creative Opera Mixはもちろん、若い人にオペラを訴求することを第一に目指しています。しかし、世代が上の方々にももちろん観てもらいたいと思っています。実際に、1回目の公演の後に熱心な感想をよせてくれたのは世代が上の人たちでした。そうした方に、従来のオペラとは違うクリエイション事業の魅力を知ってもらい、リピーターになって欲しいと考えています。

山際:若い人に向けての情報発信について、工夫されたことはありますか?

髙橋:SNSの活用には力を入れています。札幌市民交流プラザがオープンしたのは2018年ですが、オープン直後は期待感も高かったですし、テレビなどで大々的にマス広告も打っていましたから、チケットを売り出したらすぐに売り切れる状態でした。また、札幌市民交流プラザには、「札幌市民交流プラザメンバーズ」という会員組織があります。現時点で2万8,000人が登録していますが、通常のオペラ公演ならば、これまでメンバーズにメールをお送りするとすぐにチケットは完売していました。

札幌市民交流プラザにはこうした既存顧客がついていますが、それとは別の層に情報を届ける上で、SNSは有効です。例えば新型コロナウイルスの感染拡大の中で新聞などマス広告を自粛したのですが、そんな中でもSNSの広報に力を入れたんですよね。もちろん世代が上の人が外出を控えているということも考えられますが、結果として若いお客様の割合が高くなったという側面もあります。

SNSを広報に利用する際、「ポートフォリオ理論」というものを応用しています。これは資産運用のリスクヘッジに関する理論なのですが、複数の資産に分散投資することを指します。今、SNSサービスにはFacebookやInstagram、YouTubeにTwitterと色々なものがありますよね。例えばFacebookだけで広報していた場合、Facebookで反応が小さかったら何も起こらないですよね。SNSの場合、YouTubeの投稿をFacebookでシェアし、それをTwitterでシェアしたりすることでアクセスを相互に流し、相互連携することで大きな流れを作り出すことができます。SNSを使う場合には、このように複数のサービスを連携させることが大切です。

マス媒体も、SNSと連携させることができます。Creative Opera MixはNHKの番組で密着取材されていて、曲作りの様子等が放送されたんですよね。それを各出演者がTwitterで発信したりということもしています。

インタビューをするアートコミュニケーターの様子

 

平原:今後、Creative Opera Mixをはじめ、札幌でのオペラやそこに関わる音楽シーンの可能性や観客の入り口を広げるために、新たな展開方法や方向性として検討していることはありますか?

髙橋:hitaruが建設されて、本格的なオペラ公演ができるようになったことで、札幌のオペラシーンは大きく変わっています。しかし、本格的なオペラを制作するとなると、何千万単位のお金がかかるんですよね。だから、民間の興行主さんがhitaruを借りて公演を実施するのは簡単ではありません。ですから、劇場の運営者である僕たちも本格的にオペラ公演を作っていく必要があります。

hitaruでは、「鑑賞事業」「創造事業」「普及・育成事業」「交流事業」という4つの柱を設定して事業に取り組んでいます。

「鑑賞事業」は、本格的なグランドオペラ等の舞台芸術を札幌市民に観てもらうこと。hitaruができるまで、札幌ではなかなかこういう機会が少なかったんですよね。これまで、オペラやバレエを観たかったら飛行機に乗って東京や海外に行っていたのが、札幌にいながら鑑賞できるようになったのは大きな変化です。

「創造事業」というのは、我々が自主的に公演を作り上げていくことです。グランドオペラやグランドバレエ、またまさにCreative Opera Mixのような新しい形でのパフォーミングアーツなどを、地元の演奏家や教育機関と連携したりしながらやっています。

「普及・育成事業」は、ワークショップやレクチャーを通じて人々にオペラやバレエを広げること、「交流事業」は、複合施設である札幌市民交流プラザがハブになって人がたくさん集まって交流することを目指すもので、全館挙げて実施している「PLAZA FESTIVAL」などがあります。

その他の展開としては、やはりインターネット配信ですね。Creative Opera Mixはすでにチケットは完売していますが、チケットが買えなかった人もご覧いただけるように公演映像をインターネットで配信することが決定しています(※7)。新型コロナウィルスの感染拡大という状況もあり、これまでにも無料で公演の映像を配信するような試みは行ってきたのですが、収益化も含めて本格的にインターネット配信に取り組み、我々の公演を広く観ていただけるように仕掛けていきたいと考えています。

(4ページ目に続く)


※7 インターネットで配信することが決定
3月13日(土)・14日(日)に行われるCreative Opera Mixの本番の様子は、後日有料アーカイブ配信が実施される。配信は、北海道テレビ放送株式会社のホームページで行われる。詳細は以下のURLを参照。
https://www.sapporo-community-plaza.jp/event.php?num=1731

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