午前3時の玩具
札幌美術展 砂澤ビッキ ―風―
札幌芸術の森美術館
アート
2019 04/27
|ー2019 06/30
UP:2019/08/13
例えば修学旅行の夜に懐中電灯一つで怪談話をするように、現実に隣りあう非現実の世界は魅力的である。午前3時といえば普段より感覚が鋭教となり、悲観的にも楽観的にもなれる不思議な時間帯である。
「午前3時の玩具」は虫のような作品である。丸く何列にも重なる羽、もしくは丸く厚い羽。多くの脚は関節で自由な方向に向く。尾は長く関節でつながっている。それらは今にも動きそうな説得力があった。
虫にしては大きなサイズ、今にも蠢くような多足を見るに「恐怖感」を与えかねないが、実物をみるとどこか「安心感」を感じさせた。それは木という素材のあたたかさと表面の滑らかさが原因だろう。
砂澤ビッキ氏にとって午前3時という時間帯はどのようなものか。それは明示されていないが思わず前傾して考えさせられる。不気味さとあたたかさ、対極の存在が混ざりやわらかさを醸し出す作品たち。それらは芸術家だけが知る存在ではなく我々も出会うかもしれない、例えば今夜夢の中で。