演劇のアカペラ

おわらないうた特別版 朗読「父と暮らせば」

レッドベリースタジオ
演劇

2019 08/02

UP:2019/08/05

「うちはしあわせになってはいけんのじゃ」
あの8月から3年。
原爆によって全てを奪われた美津江。
いつしか、恋をすることも諦めるようになっていた。
そんな娘を応援する父、竹造。
小さな家の中の父と娘の生きている姿が・・・
朗読「父と暮らせば」より


これは「演劇のアカペラ」です。
本を読むだけの朗読ではありません。ベテラン俳優松橋 勝巳さんと歌い手の小出あつきさんが心地よい広島弁のリズムにのせ、台詞だけでリアルな役の感情を1時間20分生き切りました。台詞だけだからこそ、鮮烈にイメージとして立ち上がってくる原爆の恐ろしさを、爆風によって押しつぶされ、人も吹き飛ばされ、建物の下敷きになって亡くなった様を見せます。
「父と暮らせば」という作品に込められた作家井上ひさしさんの底知れず深い想い・・・それは「慟哭の向こうにも必ず希望が見える」という大きなメッセージに他なりません。

74年前、広島の人たちを死へと追いやった原爆の恐怖と不安は、8年前の東日本大震災で再び現実のものとなりました。原点としてのヒロシマを語り、また聴いておくことは私たちにとって、非常に意味あることだと考えます。
この劇は、誰もが大切な人と死に別れた後、つい抱えてしまう寂しさとその裏返しである罪の意識に、真正面から向き合わなくてはいけないのだと教えてくれています。自分の心の内で、きちんと「亡き人との対話」をしておかないといつまで経っても前に進めないよと、そんな声が聞こえるようでした。
今年も、夏、「あの8月の日」が、また巡ってきます。

Kazuko Tanaka

レポート

Kazuko Tanaka