今こそ観たいマームとジプシー

めにみえない みみにしたい

札幌市民交流プラザ3Fクリエイティブスタジオ
演劇

2019 08/10

2019 08/11

UP:2019/08/13

この演劇は楽しい。
今もっとも注目を集めている若手劇作家・藤田貴大さんの「めにみえない みみにしたい」」が観れる喜びはひとしおだ。
けれど、この演劇は奥深い、というのもこれまた事実かもしれない。

おねしょの悩みから始まる少女の冒険物語。
主人公はひろこちゃん。飼い猫のにゃあーにゃあーちゃんにひろこちゃんのお母さん、森の不思議な生き物に妖精たち、そして森で出会った狩人を道案内に「森に伝わる古い言い伝え」を探しに、ほのぼのとやさしく、魔法がかかったような藤田版「不思議の国のアリス」が始まる。
特に視覚効果がすばらしい。大きな布を森に見立てたり、時には雲や川になったり、さらに、しりとりゲームやサイコロ、しゃぼん玉を使って子どもの心を鷲づかみ。いっきに冒険ファンタジーの世界へ連れ去っていく。しかも、子どもは物事を頭では考えない。身体全体で受け止める。だからこそ象徴的なシーンを別な角度から何度も見せ、あるいは同じセリフを何度も繰り返す「レフレイン」が子どものワクワク感やドキドキ感に変換されていく。楽しさ満載~♪

一方、大人の鑑賞にはどう映るのだろうか。
たぶん、見えるものが違うのだと思う。大人は個々の経験や価値観、感性など、その人のフィルターがかかっている以上、イメージを伴った視覚は曖昧で、脈略がなくなっていくのも事実。目を奪われ、像を結んだ次の瞬間には消えて行く。追いかけても届かないのは、もしかしたら言葉がシンプルなだけにもっと想像力を必要とされていたのかもしれない。
文学、漫画、ファッション、音楽、ダンス、映像などあらゆるジャンルを取り入れた藤田ワールドの視点の先には、多感な少女と家族の関係、死と戦争、過去と未来の奥深いテーマが横たわっていた。「あなたの目には、何が映りますか?」「涙はすべてを消し去る」「すべては自然の流れ、どうしょうもない」のラストの言葉に熱いものが込み上げ、私はスタジオを後にした。

Kazuko Tanaka

レポート

Kazuko Tanaka