サイエンティストでアーティスト? 岡碧幸さんインタビュー!

遠い誰か、ことのありか

札幌文化芸術交流センター SCARTS(札幌市民交流プラザ1-2階)
その他特集

2021 10/01

2021 10/10

UP:2022/03/31

アートで広げるコミュニケーション

――私たちはアートコミュニケーターとしてアートと市民をつなぐための活動をしています。岡さんにとってコミュニケーションとは何ですか。
コミュニケーションは、ばん! て、文章で言えるようなことではないです。何となく引っかかること、美しいだけではなく、ぞっとするな、不思議だなという状態をシステムとした作品を作る。それを見た人が「これはちょっと面白い」と引っ掛かって考える。私が 「こんなことあるよね」と投げかけても、直接私には返ってこない。でも見た人の行動とか考え方は何となく社会に広がっていく。それが、コミュニケーションだと思っています。

――誰にどのようなことをアートで伝えたいですか?
現代の都市に住む人です。都市に住んでいて見えなくなる、発見しにくいこと、生活の中で感じられないものを伝えたいです。例えば、都市の人たちは鹿を撃って鹿肉を食べる生活をしない。プロセスが分断されている。でもそのつながりがすごく大事だから、作品で見えるようにしたいというのがモチベーションなのかもしれません。

――データや情報を作品にして伝えたいと思ったきっかけは何ですか?
例えばDNA は見えないので、身近なところで膨大な情報を持っている実感がないし、 説得力もない。情報を使って作品を作る時に一番大切に思っているのは「ほんとじゃん!」という説得力です。プロセスと結果をみんなと共有できる。それで、情報が持つ説得力に惹かれています。

――以前は「抽象的なものに関心があって、抽象的にいってしまう」とお話されていましたが。
アートは今起こっていること、見えていることの前提を問うことができる場じゃないですか。つまり、抽象的なことを考えるっていうのは、前提条件を一回取っ払ってしまう考え方をするクセがあるっていうことですね。

――鑑賞者とのコミュニケーションツールとしてキャプションがありますが、作品とキャプション、どちらを先に見てもらいたいですか。
どっちでもいいと思います。でも「なんだこれ!?」と見て自分で発見するプロセスは 鑑賞で一番楽しいところだと思います。それをすっ飛ばさない方が楽しい。「この人が何を考えて作ったのか今すぐ知りたい」ということであれば、キャプションを読んでから見ていいと思います。私は作品を見てからキャプションを見ることが多いです。自分で発見することがすごく大事だと思うんですよね。

――それは観客目線ですよね。作家目線としてネットに書かれている作品の意味やメッセージが違うと思うことはありませんか? 今回は壁というモチーフを使っているので、強力なメッセージを発信してしまうと思います。他人が意味付けてくるものに対して岡さんがどう受け入れるのかが気になりました。
壁を見てこれは政治的なメッセージがあると思うのは構わないです。何かを想起するならそれだけで満足です。「こういうことってあるよね」と思い出した人がいるなら、それで私がしたかったことは伝わっているかもしれない。元々あった話が抽象化していって全く違うものになるのは大歓迎です。

つきることのない好奇心

――もし2023年の札幌国際芸術祭に参加することが決まったとしたら、どのような作品を作りたいですか?
すごい…具体的な!!!(笑)。札幌国際芸術祭は冬になってよかったなと思います。ほぼ半年冬の豪雪地帯にこんなに人が住んでいることが面白い。作品として雪の電荷の実験が面白く発展しそうな気がします。傘に積もった雪に電気が溜まるんですよ。以前、雪の静電気を使ってものを動かす実験をしていたんです。

アーティストではない方たちと一緒に何かを作ることにも興味があります。皆さんが何かをしている姿を見たい。それを全体とした作品にしてみたいです。

――今一番関心を持っているテーマは何ですか?
スーパーマーケットに興味があります。初期の作品テーマは「食べる」でした。自分と自分じゃないものとの物質的な関わりの中で身近なのは「食べる」ことだと思うんです。 都市に住んでいる人にとっての「食べる」を考えた時、スーパーマーケットは素材として面白い。「食べる」と身体の繋がり、都市と都市じゃないところの繋がりに注目した作品を作ってみたいです。

(了)



岡 碧幸(おか みゆき)
1994 年札幌市生まれ。札幌市在住。北海道大学農学部卒業。英ロイヤルカレッジオブアー ト情報体験デザイン修了。技術による物質や現象の情報化に焦点を当て、都市生態系と自然生態系、生命と非生命、自己と他者の関係性を探るプロジェクトを行う。作品は、ささやかに動くシステムと自然・人工物を組み合わせたインスタレーションや映像の形態を取 る。STRP ACT(2020), Grantham Art Prize(2018)受賞など。
https://miyukioka.com/

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