サイエンティストでアーティスト? 岡碧幸さんインタビュー!

遠い誰か、ことのありか

札幌文化芸術交流センター SCARTS(札幌市民交流プラザ1-2階)
その他特集

2021 10/01

2021 10/10

UP:2022/03/31

見えないけれどつながっている

――作品では循環、繋がりを表現されています。
自分と自分じゃないものとの境界に関心があります。境界を繋ぐのは物質的なもので、 自分も物質として捉える一体化感覚は環境問題などを考える上でも大切だと思うんですよ。例えば自分の行動や存在は環境とどう繋がっているのか。それを情報やデータではなく、自分で「本当にそうなんだ」と実感することが大事だと思います。自分が何らかの物質と繋がっている感覚は、色々なことに関連する。自分と自分じゃないものが混ざったり循環したりするコンセプトが好きなんです。

――作品に込めるメッセージとは?
単純にそこにあることがわかればいいなと思います。作品はプロセスの凝縮だと思うんです。変化って直接的にわかりにくい。例えば、落ち葉が分解されることは理屈として知っていても、それをずっと見届けることはできないですよね。長い時間をかけた変化のプロセスを体験して自分で発見する。そして、見えないけれどあるという実感を共有したい。


――科学とアート、二つの分野の融合から生まれる可能性をどう思いますか?

今の生活は科学的な発見や技術なしには成り立たない。食べ物や日用品、あらゆるものが研究の賜物ですよね。対してアートは日常に何かしらの介入をして、見えないことも見えるようにしてくれるプロセスだと思うんです。そしてこの現代社会でアートをやるということは、科学的な見方が必然的に入ってくると思います。科学を意図的にくっつけようとか、サイエンスを伝えるアートにしようというよりは、そういう科学的な視線が自然に入ることでこれまで見えなかったものを発見したり、他の人にも発見してもらったりすることができるのかなと思います。

『テクニックとマジック』(※2)という本があって、現代社会で理解されている使えるものをテクニック、よくわからないけど存在する何かをマジックと呼んでいるのですが、アートはマジックの話ができるのだと思います。その時点で事実があるとか、そこからインスピレーションを得てある物語が生まれたことは、事実です。「インスピレーションを得てこれができました」っていうのは、問題ないと思います。でも「こういう技術があってこんなことができるんです」という事実をメインにして作品を作ってしまうと、それが本当の情報として独り歩きしてしまう。難しい問題ですね。だから私は実験的な、未完成な実験がすごく好きです。

(4ページ目に続く)


(※2)Federico Campagna “Technic and Magic: The Reconstruction of Reality” Bloomsbury USA Academic, 2018

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