『真説カチカチ山/ロングクリスマスディナー』インタビュー

教文オペラ オペラ公演「真説カチカチ山」「ロングクリスマスディナー」

札幌市教育文化会館
オペラ特集

2019 12/14

2019 12/15

UP:2019/12/11

日本語オペラの歴史は80年程で、まだまだ開発途上。今回の公演では、まず言葉として意味が伝わったかということを気にかけています。

朝日:オペラといえば、歌手の方が気持ちよく歌って、言葉というよりは雰囲気とか、声そのものに、聴いている方も気持ちよくなるという部分ってあると思います。でも、もっと一つ一つの言葉を明瞭にということが、大事だということなのでしょうか

河本:それはそう思います。もちろん、じゃあ言葉だけ伝わったからそれでいいかというと、そこは次の段階として出てくることじゃないでしょうか。なので、ステップワンのところとしては、まず言葉が伝わらなければというスタンスです。それで、「日本語オペラ」というふうに、敢えてオペラに日本語ってつけるようにしてるんです。

そういったことが分かって作ってらっしゃる作曲家さん、例えば、團伊玖磨先生とか、それから林光さんだとか、そういった方はちゃんと日本語の独特のリズム感みたいなのを分かって譜面を書かれています。その前の世代である、山田耕筰のオペラなんか、日本語のことに関して、全く申し訳ないけども、まだ試作品の段階です。日本語の悪いところが出てしまっている。日本語って音が多いから、ひとつのことを言うのに、すごく時間がかかります。「アイ、ラヴ、ユー」と3つで終わるのが、「私は、あなたの、ことが、好きです」って音がたくさん必要。どうしても冗長になっちゃう。

日本語にどう取り組んだかという観点から、山田耕筰から始まって團伊玖磨だとか林光のオペラをならべて上演するシリーズって面白いと思います。日本語として挑戦を始めた人、うまくいった人、完成させた人、発展させた人、というように並べてみる。僅か80年足らずの間に、そうした出来事が日本の場合、ぶわぁっと起ったんです。外国ではそういうスピードではない。でも、日本語で気持ちよく歌えるオペラって、あんまりないっていうのも事実だと思います。

朝日:そもそも、オペラに向いている言語とか、向いていない言語とかっていうのはあるんでしょうか?

河本:同じようなテーマが学会でも出たことがあって、日本語の場合は母音が五つしかないからどうのこうのといった話があります。日本語は色が付けづらいとか言う方もいるのですが、単にそのネイティブな言語の良さを、生かせているのかどうなのかということに思います。

朝日:オペラに向いている、いないではなく、それ(言葉)を生かすか生かさないかの話ということですか?

河本:向いてるか向いてないかっていうと、それは料理と同じで、例えば野菜たくさん並べてこれお寿司に向いてますかっていう質問と同じです。それはもう向いているといえば向いているけれども、それは料理の仕方であって、元々素材が持っている味っていうのもあるので、その素材を一番生かせるものはあるかもしれないという話です。

でもまだ日本語のオペラも開発途上の部分があるのかなって気がしますけど、そんなに作品の数が多くはないのですし。まぁ面白いと思います、これから先の発展が。

朝日:今回の公演について、こういったことを注目して聴いてほしいとか、観てほしいとかっていうのは何かありますか。

河本:僕としてはこの2つの作品を、まず言葉として意味が伝わりましたか?という点が一番気になるところです。歌い手さんの音以外に、オケの音も入ってくるなかで、当然言葉が伝わったかっていうのが大前提にあって、そこから先に面白かったとか感動したとかいう話であって、言葉が伝わらないのにただ感動したとかって言われても、それじゃあ、なんか闇鍋食べさせられたような…、何食べてるのか分からないのに、美味しかったかって訊かれて、美味しかったと答えているみたいなものですから。

朝日:なんだか意外といいますか、今まで考えてもいなかったようなお話を聞かせていただきました

河本:僕、教員養成のほうが主なので、オペラを観に行く人もそうだけど、若い世代というか、やっぱり幼稚園とか小学校の先生にもっと頑張ってほしいと思っています。すぐ感情を込めてとか、そういうことに逃げてしまいますよね?感情を込めなくてもいいからまず言葉として伝えるのが大切です。

朝日:歌に関して、子供の頃から、言葉の明瞭さということを意識できなければということですか?

河本:そうです。ただ大きな声で張り叫ぶように歌うのが、元気よくていいわね、みたいなことになっています。外国から来られた方が日本のそういう姿を見て、なんていう国なんだここはと思うんじゃないでしょうか。こどもが絶叫してると。なんかデモを起こす教育でもしているのか、みたいな言われ方をされかねない。元気よくていいわねって、それで終わってしまう、日本では。でも、そういう先生方ばかりではないです、もちろん。ちゃんと歌ってらっしゃるところもある。日本語の歌唱のことを話しだしたら、もう止まらなくなります。

朝日:すごく興味深く面白いお話でした。長い時間ありがとうございました


公演情報

教文オペラ オペラ公演「真説カチカチ山」「ロングクリスマスディナー」

日 時:2019年12月14日(土)17:00開演、  15日(日)14:00開演

会 場: 札幌市教育文化会館小ホール

料 金:指定席6,000円 自由席5,000円

指 揮:河本洋一

演 出:三浦安浩

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