「Creative Opera Mix Vol.3」鑑賞レポ-ト
Creative Opera Mix Vol.3 MASTER PIECES
2022 01/23
UP:2022/03/18
オペラの魅力をより幅広く伝えたい。Creative Opera Mixはそんな願いのもとに始まった。三回目を迎え、いよいよ札幌文化芸術劇場hitaruでの開催だ。華やかなポップスアレンジのローエングリンで幕は開いた。ソプラノ川島沙耶さんの軽やかな歌声が響き渡り、客席が静まり返る。続いて弾けるように飛び出したダンサ-たち。躍動感あふれる動きに圧倒され、一気に引き込まれていった。
多くのファンを引き付けるこの舞台の魅力は親しみやすさだ。オペラの名曲にジャズ、ヒップホップなど多彩なアレンジが加わり、幅広い年代に受け入れやすい。例えば、「セビリアの理髪師」でフィガロが歌う「わたしは街の何でも屋」はハードロック調だった。早口でまくし立てるように歌う陽気な曲はリズムが強調されて小気味よい。その強いビートに乗せてフィガロの名前がステ-ジの背景に映し出された。文字はイタリア語や韓国語など多様な言語に次々と置き換わり、現れては消えていく。まるで、こだまを視覚化したように愉快な演出だった。フィガロを歌う下司貴大さんの革ジャン姿も軽快で、のびやかな歌声に心が躍った。
この舞台はオペラを身近に感じて楽しめる。実にアーティストたちの熱意の結晶だ。オペラ歌手を始め、ダンサ-、DJとジャンルを超えて地元の若いアーティストが集まった。そして互いに高め合い、オペラをリスペクトしつつも独自の舞台をつくり上げた。その情熱をひしひしと感じ、応援したい気持ちになる。温かい満場の拍手はそんな思いの表れだろう。一方で、市民も積極的に関わる機会があればとも思った。客席ではダンスファッションの子供たちを見かけた。大人も子供も参加できるワ-クショップがあればどうだろうか。出演者との交流で大人は舞台を身近に感じ、子供たちは夢を広げるに違いない。アーティストと市民が一体となって札幌の文化を育んでいく。そんな期待が膨らみ、進化し続ける舞台の今後がますます楽しみになった。