PMF2021オープニング・コンサート
PMF2021 オープニング・コンサート
2021 07/23
UP:2021/08/22
「芸術家は一代にして生まれるものではない」という言葉を引用するのは、少々大袈裟かもしれませんが、PMFオープニング・コンサートを聴いて、文化における積み重ねの大切さを、改めて痛感しました。
昨年のコロナ禍による中止を経て2年ぶりの開催となりましたが、音楽祭の趣旨ともいうべき教育プログラムなどを大幅に縮小しての開催であり、海外の大物奏者や指揮者の来日も無く、若干のさみしさを感じたのも事実です。
しかし、この教育音楽祭の30年を超える歴史の中から巣立ったPMF修了生や、今年のアカデミー生、そして現役の音大生により編成されたPMFオーケストラJAPANは、同じくPMFの修了生である指揮者の原田慶太楼のタクトの下、まことに輝かしく生き生きとした演奏を披露して、本当に胸のすくような楽しいコンサートでした。
そして、この「楽しい」ということこそ、積み重ねが生んだ「成熟」ではないかと思うのです。昔から日本人演奏家の「正確さ」には定評がありました。しかし、単に間違えないで弾くというレベルではなく、音楽の素晴らしさを心から表現できる深みに、今や達したのだと思います。もちろんそれは、PMFだけではなく、日本の音楽界全体が育んだ成果だとも言えるでしょう。
演奏会の2曲目、ガーシュウインのピアノ協奏曲の第1楽章が終わったところで会場から拍手が起こりました。曲の途中での拍手はマナー違反かもしれませんが、指揮者の原田は客席の方を振り向き、「拍手していいんですよ!」と声を掛けます。そして、客席からは、改めて万雷の拍手。演奏家も客席も、音楽を心から楽しめるように「成熟」してきたことを実感させるシーンでした。
鑑賞データ
日時:2021年7月23日
場所:札幌コンサートホールKitara
曲目:
バーンスタイン「キャンディード」序曲
ガーシュウィン ピアノ協奏曲
コープランド 「ロデオ」から4つのダンスエピソード
ガーシュウィン(ベネット編曲) 交響的絵画「ポーギーとベス」
演奏:
PMFオーケストラJAPAN
三舩優子(ピアノ)
原田慶太楼(指揮)