見えない星々を想像すること
サンドラ・シント展「コズミック・ガーデン」
銀座メゾンエルメス フォーラム
アート
2020 02/11
|ー2020 07/31
UP:2020/08/20
「星を見る」という行為は、現代人にとって馴染みの薄いものになりつつある。例えば晴れた日に夜空を見上げても、星の光は街の灯にかき消されてしまい、肉眼で観測出来るのは月などの明るい星々に限られる。また、多くの人が目覚めている昼間は、そもそも星を見ること自体叶わない。
サンドラ・シントの個展「コズミック・ガーデン」では、非日常の象徴である星、ひいては宇宙への想像を掻き立てられた。展示室には寒色系で塗られた壁があり、建物の壁面から見て左から右に向かって時間が経過する様子を、色彩の違いを使って描写している。時間帯で言うと、「朝」が水色で、紺色の度合いが深まるほど「夜」に近づく、というわけだ。突き当たりの部屋は壁、カーペット、クッションの全てが紺色に塗られた「夜」のスペースで、来場者は座ったり寝転んだりと自由な体勢で鑑賞できる。そして「朝」から「夜」にかけての展示スペース全体に、雲や雪や星、その他実際の空には浮かんでいない様々な物に見えるモチーフが白線で縦横無尽に描き込まれている。
「夜」のスペースに寝転んで、壁に描かれたドローイングを眺める。最初天の川に見えたモチーフは、時間が経つにつれてクラゲのような生き物にも、あるいは細長い遺伝子のようにも見えてきた。そう言えば、人間は星くずから出来ている、と言った科学者がいたのを思い出す。案外、人間と星々とは (物理的な距離はともかく) そう離れていないのかも知れない。そんなことを、星空の疑似体験を通じて思った。