オペラ「カルメン」

札幌スロヴァキア国立オペラ2018 コンサートオペラ カルメン

札幌市教育文化会館大ホール
オペラ

2018 06/24

UP:2020/08/06

「カルメン」の主役はホセであると、このオペラを聴くたびに感じてしまいます。もちろん、タイトル通りカルメンだという人もたくさんいますが・・・。どちらに肩入れしてもオペラは立派に成立し終わっていきます。

ビゼーは私の目には異色に映ります。彼はカルメンを風景的に描き、その色彩で観客をまどわしながら、ドン・ホセの悲劇を印象づけているように感じるからです。さらにビゼーの激しくも悲しい旋律のなかで情熱的に舞うカルメンと身近な美しく小さい花を見過ごし、遠くのトゲある薔薇を追いかける男、ホセとの恋に、二人のバック・グラウンドの違いや二人の確執が説得力を増幅させ、何かを予感させるのです。

観客が共感を得やすいのがホセです。4幕でのカルメンはひたすらホセに拒絶の言葉を投げかけ続けますが、拒絶の代わりに彼女が何を求めているかが今ひとつ理解できず、謎多き女性として、あるいは毒婦のような女性として映るからです。その分、ホセにとっての運命の女性イコール、カルメンという印象は乏しく、逆にカルメンイコール、ビゼーが求めた自由な女性の印象が強まるばかりです。

世界で最も上演回数の多い作品として人々に広く慕われている「カルメン」は、毎回新鮮な響きを聴かせ、人間の内面と外面を同時に見せてくれます。それにしても、ホセという男はビゼー自身かもしれません。

Kazuko Tanaka

レポート

Kazuko Tanaka