映画「惑星ソラリス」鑑賞レポート
ソビエト時代のタルコフスキー
2021 02/27
|ー2021 03/12
UP:2021/03/04
タルコフスキーの映画に溢れる水や火のイメージについては語り尽くされた感があるが、シアターキノで久しぶりに「惑星ソラリス」を観ると、やはり、その瞑想的とも言える水のイメージが強く印象に残った。タルコフスキーの映画は詩的で、そして哲学的だと言われるが、それはこの水のイメージがもたらすものだろう。
四大元素とは、火・空気・水・土を指す。そして、この四つの元素によって世界の物質が構成されるとする考えを、古代ギリシャの時代から人類は受け継いできた。つまり、二千年以上に渡って、人はそれらの物質を思い続けたということだ。無数の思索がそれらをめぐってなされ、様々な想像がそれらから生まれた。そんな物質のひとつである、水のイメージに溢れたタルコフスキーの映画を観て、人が深い思いに導かれるのも当然のことだろう。
この映画で水は、時に、人の心を写す鏡であり、暗く憂鬱な死そのものであり、さらに、魂を洗い清めるものだ。また、水に次いで、火をとらえた映像も印象に残る。自ら炎に飛び込んで灰となり、その後復活をとげる不死鳥の言い伝えがあるように、火からは、死と再生、浄化といったことが連想される。
しかし、これらは私の想像に過ぎない。観る人が違えば、もっと様々な詩や哲学、物語を、タルコフスキーの映画は喚起するだろう。「惑星ソラリス」は、人類が物質に対してめぐらせた想像力の結晶とも言うべきものだ。人はそこから、それぞれ様々な思いを引き出してくることになる。
最後に蛇足かもしれないが、一つ記しておきたい。ここまで書いたように、この映画には、水と火に加えて、流れる雲や霧といった、空気をイメージさせるものも観られる。しかし、何故か土を印象づけるようなシーンがない。ひょっとすると、土すなわち大地から連想される国というものは、タルコフスキーにとって忌まわしいものだったのかもしれない。今回のシアターキノの特集上映は「ソビエト時代のタルコフスキー」と題されていたからだろうか、ことさらそんなことを思った。
鑑賞データ
日時:2021年2月27日
場所:シアターキノ