ビストロカフェ+ギャラリー・オマージュ

ビストロカフェ+ギャラリー オマージュ

その他

2022 03/30

UP:2022/03/30

鑑賞レポートに食べ物のことを書くのは場違いだと言われることは百も承知の上だが、それでも書きたくなるのは言うまでもなくその店がそれほど美味しい料理を出すからに他ならない。そして、場違いを承知の上であればそれなりの言い訳は用意してあって、その店がギャラリーを併設しており、つまりアートを楽しめる場所だということだ。これで充分、アートコミュニケーターとしてこの店について書くことの条件は満たしていると思うのだが、それでも納得してもらえないのであれば、料理も芸術だと言って開き直るしかない。

まずこの店で供される料理の野菜について触れておきたい。それを端的に分かりやすく言えば、素材の美味しさを十二分に生かしていると言うことになるのだが、その程度の賛辞では短すぎて舌が納得しそうにもない。例えば茄子。パスタでも他の料理でも、そこに入っている茄子は茄子のままの美味しさに満ちていて、茄子以外のものを食べているということなど微塵も心に浮かばない。鮮度の良さもあるのだろうが、シェフの確かな腕を信頼して茄子はなすがままに自分の最良の味を提供することになったに違いない。野菜を食べるということがこんなにも気持ちの良いことだったのかと、この店の料理は教えてくれる。

同じことは肉にも魚介類にも言えて、とにかく皿に盛られた食材はどれもがそれぞれのそのものの味を遺憾なく発揮しながら一つに調和している。その皿にあるものは、秩序ある旨味、見た目の美しさはもちろん言葉を失う滋味、ただ食べることの楽しみ。

例えば人の手が土と火を使って作る陶芸がアートなら、同じくシェフの手が食材と火で作る料理が芸術だと言えないということがあるだろうか。アートや芸術を持ち出して鑑賞レポートらしくまとめたものの、我ながら饒舌になりすぎたと若干恥ずかしくもあり。それでも明日のあの店のランチを思うと自然口元は緩む。

朝日泰輔

レポート

朝日泰輔