オペラ プッチーニ「蝶々夫人」(新国立劇場「巣ごもりシアター」 より)
巣ごもりシアター「オペラ プッチーニ『蝶々夫人』」
オンライン配信
オペラ
2020 06/12
|ー2020 11/19
UP:2020/11/13
「世界中の美女を自分のものに」と歌うチャラい男と、会ったことも無い外国人のために改宗までするイタい女。冒頭からアメリカ軍人・ピンカートンの軽薄な発言が続くせいか、彼の妻になる蝶々夫人まで印象が悪かった。
端から一生を共にするつもりがない男と、一生を捧げるつもりの女。どちらも相手を深く知ろうとせず“自分にとっての理想の恋”という虚像に夢中のようで痛々しく、2人の行く末の雲行きが怪しいことは目に見えていた。
3年後、アメリカで結婚して本妻と一緒に戻ってきたピンカートンと、それを知らずに歓迎の準備をしていた蝶々夫人は案の定破綻する。
蝶々夫人はピンカートンとの間に生まれた息子を渡すと決意するが、その幼子の前で「名誉のため」に自害してしまう。愛する子の前で、喉に刃を突き立てて自刃する様は余りにも惨い。
名誉の死とは何なのか。凛とした強さのようで、惨めな自分を認めたくない弱さにも見える。結局はそれすらも“自分にとっての正しさ”という幻想が生んだ虚像なのかもしれない。