アーティストインタビュー:真吏奈

ONE ~ひとりの女性~

SCARTSコート(札幌市民交流プラザ 1F)
アート特集

2022 03/09

2022 03/16

UP:2022/03/31

私らしさと心づかいを大切に

鈴木:真吏奈さんのイラストは女性誌でもよく目にするのですが、女性誌の仕事で意識していることはありますか?

真吏奈:女性誌は、現実的な女性を描くことが求められるので、表情の指示や、今流行ってる服装をお願いされたりします。でも、私いつも家で描いてるからビジネス女性の流行がわからないんですよ。なので、結構資料集めをしてから描くようにはしてますね。ただ、最近はイラストレーターさんの個性を大事にしてくれるようになったと感じます。なので、読者側が「この人の絵だ、好き」と思ってくれることを、多分雑誌社もわかってくれていると思うんですね。なので、服や表情の指示がある女性はその通りに描く一方で、扉絵とかは思いっきり自分の個性を出していくように使い分けてます。

鈴木:制作過程でなにか気をつけていることはありますか?

真吏奈:ラフのときに、おおよその指示が来るんですけど、その指示を自分の中でイメージして、こういう扉絵だったら綺麗かなぁ、嬉しいかなぁというのを描いて、ラフの時点でイメージが伝わりやすいように、完璧に近い形作っちゃいます。普段描いてる作品のストックがあるので、それを組み合わせて、Photoshopでだいたいレイアウトします。完成図はこんな感じでどうででしょうかと送ります。クライアントにいいよと言われたらそのように完成作品を描いて、送ります。自分からご提案させていただく場合が多いです。

鈴木:イラスト制作に使う画材はアクリルとPhotoshopを使っているとのことでしたが、 Photoshopはどのように使っているのですか?

真吏奈:基本的にはアクリル絵の具で描いたものを、 Photoshopでレイヤー分けしてレイアウトをしたりとか、1個1個部品を描いたものをスキャンして、Photoshopで組み合わせていって、1枚の絵にして納品するとか。雑誌や広告では、デザイナーも手直ししたいんですよね。「ここをもう少し修正したいです」という指示があるので、修正を後でしやすいようにレイヤー分けして、デザイナーが自由に動かせるような形で納品することが多いです。

鈴木:配置を考える際には、デザインをやっていた経験が活きているんでしょうか?

真吏奈:そうですね、ある程度は理解しているつもりです。そういうイラストレーターは、クライアントも多分使いやすいと思います。1枚の原画をどうぞと渡されるよりも、データにすることでデザイナーも作業がスムーズになるので、「このイラストレーターさんは考えてるね」となると思うんです。そして完成度も高かったら、「次もお願いしよう」と。そこは結構気をつけています。

鈴木:戦略ですね。

自分の好きな「かっこよさ」を信じる

鈴木:真吏奈さんの作品には独特の世界観を感じますが、この世界観はいつ頃確立されたのでしょうか。

真吏奈:描いていくうちに今のような作風になっていったと思います。

20代前半のときに描いていた絵は、全然定まらなくて、かわいい絵や、キャラクターチックな絵等、とにかくいろんな絵を描きました。専門学校のときにデザインを習っていたというのもあったり、有名なアートディレクターさんの作品を見ていたので、それに影響を受けてリアル画や、洗練された絵が好きでした。リアルチックな絵や女性を描いたのですが、その中でもかっこいいなと思われるような絵がいいなって、自分の中で無意識に描いてたと思います。それで、そういう絵が売れたり、広告で使われたりするようになったので、やっぱり自分が好きなモチーフは伝わるのだなと思いました。

多分ね(笑) 。

鈴木:作品を作る上で資料として見ているものはありますか?

真吏奈:日本のデザインは整理整頓されていて、見やすくて、レイアウトが綺麗だなというイメージが私にはありますが、デザイナーの頃は海外のデザインの本を見ていました。文章をどう読めばいいの?っていう自由なレイアウトだったり、爆発的なものが衝撃で感銘を受けました。紙面がアート。そのときから、アートとか、イラストの世界に行きたい、と漠然と頭にはあったと思います。それがデザイナー時代だったので、デザインに組み込もうとしたら「ちょっとそれは駄目だよ」って言われました。

アートディレクターは制限がある中で自分の個性を出しつつ、整理整頓していって、その奥ゆかしさが私にはできないなって。「どなたかまとめてください(涙)」と思いました。

鈴木:影響を受けたイラストレーターさんはいますか? その方のどんなところがどんな風に好きですか?

真吏奈:イラストレーターさんではなくアーティストさんなのですが、天野喜孝さんや会田誠さんの絵を見たときにすごい衝撃を受けました。元々衝撃作ではあるんですけれど、心に刺さりました。

鈴木:会田誠さんの作品は見たことがあって、色彩似てる絵あった!と、頭の中で繋がりました。

真吏奈:(笑)。ちょっと変態チックというか、衝撃的な絵が多いんですけれど、私はすごい素敵だな、綺麗な絵だなと思っています。女性の体のラインや表情とかもすごい研究されているだろうなって思いますし、女性が好きだからここまで描けるのかなって、尊敬しています。

天野さんは、「CANDY GIRL」シリーズがとても好きです。何か行き詰まったらこの おふたりの絵を観て心を落ち着かせます。
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