アーティストインタビュー:真吏奈

ONE ~ひとりの女性~

SCARTSコート(札幌市民交流プラザ 1F)
アート特集

2022 03/09

2022 03/16

UP:2022/03/31

女性のありのままの美しさを表現したい——そう語るのは、札幌市在住のイラストレーターの真吏奈さん。女性や動物といったモチーフを繊細に、かつ力強く描く彼女は、現在雑誌の挿絵やポスタービジュアルなどでその才能を発揮しています。今年3月には多方面の芸術家たちを集め、「ひとりの女性の生き方」をテーマにした展覧会「ONE ~ひとりの女性~」をSCARTSで開催。独自の画風やイラストレーターとしてのスタンスは、どのように確立されてきたのでしょうか。


ONE ~ひとりの女性~

<日時>
2022年3月9日(水)~ 16日(水)11:00 ~ 19:00
※会期中無休
<会場>
・SCARTSコート(札幌市民交流プラザ1F)


・インタビュー日:2021年10月12日(火)、札幌市民交流プラザにて
・参加者:大澤、鈴木、山際(SCARTSアートコミュニケーター)


はじめは「オナガドリ」から

鈴木:いつ頃からイラストレーターになりたいと思っていましたか?

真吏奈:親が言うには、絵自体は小さい頃からずっと好きで描いていたみたいです。それが染みついていたのか、子供の頃から絵に携わることをやりたいなと漠然と思ってました。

鈴木:現在はイラストレーターですが、デザイン事務所に入られたのはどうしてですか?

真吏奈:最初はイラストレーターという仕事自体知らなくて、ディズニーランドのポスターを見て「これは誰が描いたんだろう」とよく思っていました。でも、高校生ぐらいになったときにふと雑誌とかポスターとか広告とかの業界で、写真や絵も全部総合で考えるアートディレクターをやりたいなと思いました。それで最初はデザイン学校に入ったんですが、その後会社でデザイナーとして働いたときに、自分の中でアートディレクションの奥深さをすごく遠く感じたんですよね。本当にいろんなことに気がつき、全てに対応できる人じゃないとなれないような職業で、ちょっと自分には向いてないなと途中で悟ったんです。

鈴木:そこからどのようにイラストレーターとして仕事をするようになったのでしょうか?

真吏奈:自主制作のときとかに、自分はデザインよりもアートなイラストや絵を描いてる方が好きでワクワクして楽しいと思ったときに、「イラストの仕事ってあるのかな」と考え始めました。身近にイラストレーターの方がいたのでデザインを辞めて、20,21歳の頃に本格的にイラストレーターになろうと思い立ちました。

専門学校ではデザインとイラストを習う授業は半々ぐらい、授業も2年間しかありませんでした。なので、美大出身の人に比べたら勉強の能力も技術も全然ない状態でイラストをやることになって、何からしていいか全くわからなかった(笑)。札幌にイラストレーターをされている専門学校の先生がいらっしゃったので、その方にお願いして、お手伝いしながら絵の描き方を教えてもらいました。最初はスッゴイへたくそな絵だったんですけど、アクリル絵の具や水彩絵の具、鉛筆画で描いたり、という修業をしていました。その間、自分の作品も作って展示会もやって、「絵は売れるのかな」とか「自分の絵はどう見られてるのかな」とか周りからの評価も見ていました。それで、22,3歳のときに初めて絵が売れて、買ってくださった方は知り合いではない方なんですけど、嬉しかったです。

鈴木:デザインの経験がイラストに活きていますか?

真吏奈:そうですね。レイアウトを自分なりに工夫して、部屋に飾ったらかっこいいかなとか、ちょっと工夫をしました。そしたらやっぱり家に飾ることを想定した絵が売れたので、少し自信に繋がりました。

鈴木:本格的な商業デビューのきっかけはなんでしょうか?

真吏奈:SNSに自分の絵をアップしていたら、それを見たデザイナーの方から広告に使ってみたいというお話が来ました。それが自分の絵が初めてお仕事として広告に載った大きなきっかけだと思います。お仕事内容は、当時あったpivoの夏のサマーセール「ピヴォDOバザール」に合わせてオナガドリという尻尾の⻑いニワトリを描いてくださいというシンプルなものでした。私は「ファッションビルだからファッショナブルなオナガドリ描きます」って言って(笑)。イラストレーターって、その広告のイメージに合うような絵を描いてくださいと頼まれるのが普通だと思うんです。でも、クライアントとデザイナーの方が、「SNSに載せてたあなたの絵の雰囲気のまま、自由な発想で描いてください」と言ってくれました。広告って表現が制限されるのかなと思っていたんですけど、自分らしさを出した表現が、自分の中で100%出し切ったものだったからそれが相手にも伝わってくれたのだと思います。そこが大きなスタートで、その後の姿勢に繋がってると思います。

広告のポスターって、道歩く人が「おっ何だろ?」と立ち止まって見ちゃうようなインパクトを提供しないといけないと思うんです。写真だとすごく綺麗だったりわかりやすかったりするものが広告でよく使われると思うんですけど、絵は好みもあるので伝え方が難しくて、みんなぷら〜っと通り過ぎちゃったら、「絵だね」みたいな(笑)。でも、そこをちょっと「ん? なんでこの絵なんだろう?」ってちょっと立ち止まらせるのが多分大事かな、と思っています。
(2ページ目に続く)


真吏奈
イラストレーター/アーティスト。1986年北海道江差町のお寺の孫として生まれてすぐ札幌市へ。女3人家庭で育った影響から女性の芯の強さや美しさを表現した作風へ。札幌PIVOT2013・第13回札幌国際短編映画祭・コンサドーレ札幌GIRLSDAY2020ビジュアルなど全国で活動中。NYや韓国のアートフェアに参加。 https://www.abemarina.com/

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