作家 国松希根太さんとみる《HORIZON》
インタビュー
2021 10/02
UP:2023/01/11
【対照的な《HORIZON》と《ENENT HORIZON》】
国松希根太《EVENT HORIZON》
板にアクリル絵具/鉄 160×360cm さっぽろ創世スクエア蔵
撮影: フォワードストローク
Q : さっぽろ創世スクエアへの展示についてですが、1階のコンビニ前には横長の《HORIZON》を、同じ1階のオフィス棟には縦長の《EVENT HORIZON》をそれぞれ3つの連作で展示しています。1階のコンビニ前の作品について質問ですが、ここには別の作品ではなく、最初から《HORIZON》を展示するつもりだったのですか。
国松:横並びに3つ繋がった空間だったので、壁面にぽつんとあるのではなく、その空間をフルに使ったサイズでの3つで1つのような《HORIZON》でいきたいと思いました。
Q : 縦長の《EVENT HORIZON》は、同じシリーズでありながら作風がまた違っていて面白みを感じますね。
国松:そうですね。この縦長の《HORIZON》というのもさっぽろ創世スクエア以前にも何回か作っていたんですが、イメージとしては地球の地上から見る水平線ではなく、例えば飛行機とかロケットくらい離れたところから地球を見たときの輪郭が常に水平じゃなくて縦に見えることもあるだろうと、もう少し俯瞰した場所から見たイメージです。
Q : 建物内で《HORIZON》と《EVENT HORIZON》の2つの作品がちょうど真裏に来るような配置関係だと思ったのですが、これはもともと制作前から場所が決まっていたのでしょうか。
国松:作品の1つが横方向で、その裏側は縦方向でクロスしているイメージだと、建物ができる前から計画があり、自分はその空間を実際は見てないけどコーディネイターとディスカッションをしながらイメージして作っていきました。
さっぽろ創世スクエアのテーマに合わせて建物と創成川ラインがクロスする、とプレゼンしたと(コーディネイターが)言っていました。
僕はそこまで考えてはいませんでしたが、実際に建物空間の中で表と裏でクロスしてるって面白いですよね。
Q : 設置する場所もそうですが、2つの作品のイメージが陰と陽のように全く違った印象を受けます。《EVENT HORIZON》は色も鮮やかで、上に縦に伸びる線が前向きな明るい気分にしてくれるようでこれから仕事に向かう人が多く出入りするオフィス棟にあるというのがとてもいいと感じました。またコンビニ前に設置された《HORIZON》の方は、静かな落ち着いたイメージで、賑わっているコンビニとは対照的でもありますが、どうお感じになりますか。
国松:コンビニ前じゃない方がよかったんですけど(笑)。でもギャラリーとは違いオフィスビルなので、通りがかりに歩きながら見る人が多いと思うんですよね。そうなると人の動きも横になると思うので、横長の作品であるのはいいのかなと感じました。また、働いている人が出勤時と帰るとき、あるいは日によって作品の見え方が違ったり、題材がシンプルなのでいろんな見え方をしてくれるのではと思います。
《EVENT HORIZON》の方は、遠くから見えるし建物の外からも見えるので、場所としてはいいと思います。実際宇宙から地球を見た時の色は鮮やかに見えるので、意識して横長の方とはイメージを変えてみました。
Q : そうなのですね。お話を聞いて2つの作品の違いや縦と横の意味がさらに明確になって、ますます面白いと感じました。本日は長い時間ありがとうございました。
国松:ありがとうございました。
国松希根太
1977年、札幌市生まれ。多摩美術大学美術学部彫刻科を卒業後、2002年より飛生アートコミュニティー(北海道、白老町)を拠点に制作活動を行なう。近年は、地平線や水平線、山脈などの風景の中に存在する輪郭(境界)を題材に彫刻や絵画、インスタレーションなどの作品を制作している。主に個展、グループ展などで作品を発表し、スパイラルガーデン(東京)での個展”material”や、サヴォア邸(ポワシー、フランス)でのグループ展”* folding cosmos VILLA SAVOYE”、越後妻有地域 (新潟県十日町市、津南町)での”大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018”など国内外で発表活動を続けている。また、アヨロラボラトリーの活動としてアヨロと呼ばれる地域を中心に土地のフィールドワークを続ける。飛生アートコミュニティー代表。