さっぽろ人形浄瑠璃芝居あしり座公演 鑑賞レポート

人形浄瑠璃2019 ~さっぽろ人形浄瑠璃芝居あしり座25周年記念公演~

札幌市こどもの劇場やまびこ座
その他

2019 10/13

2019 10/14

UP:2019/10/16

人形浄瑠璃や歌舞伎に興味はあるが、敷居の高さを感じて、実際に観に行くのは躊躇してしまうという方は多いのではないでしょうか?

そんなみなさんへ、僭越ながら、芝居見物の先輩としてアドバイスさせていただきますと、まずは、細かい筋やセリフにはこだわらず、その独特な上演の「スタイル」を楽しんでみてはと申し上げたいです。浄瑠璃や歌舞伎などの古典芸能には、普通の芝居とずいぶん違うことが、たくさん見られるはずです。

例えば、芝居が始まる際の「東西声」。黒子が舞台に現れて、拍子木を打ち、「とーざい、とーざい」と声をあげ、つづいて、芝居の外題、語る太夫や人形遣いの名前を客席に告げます。なにやらふしぎな儀式が始まる前のおまじないのようで、わたしはこれを聞くと、いやがうえにも、劇場という異空間に来たという気分が高まります。

また、特に人形浄瑠璃でいうと、とびきり独特なのは、「三人遣い」といわれる人形の操作方法でしょう。一体の人形を三人で操作するのです。一人は頭と右手、もう一人は左手、最後の一人は足。ずいぶんややこしいことをしますが、その分人形の動きや顔の表情の変化が激しくなり、複雑な感情表現が可能になるのです。しかし、何と言っても、人形の後ろに三人の人間がいる舞台の景色が、摩訶不思議なもので、わたしはただただ見入ってしまいます。

ありがたい「日本の古典」を見に行くというよりも、奇抜で見慣れないものを経験しに行く。そんな風に考えた方が、人形浄瑠璃や歌舞伎は楽しめるのではないかと、わたしは思います。しかも、人形浄瑠璃に関しては、それを上演する一座が、札幌にはあります。意外に身近なところで、観ることができるのです。

その「さっぽろ人形浄瑠璃芝居 あしり座」の二十五周年記念公演を、東区のやまびこ座で鑑賞してきました。上演がむずかしい大作にも挑戦する意欲的な公演で、芝居の見ごたえは十分。そして何より、大人から子供まで、一座総出で取り組む様子がなんとも暖かく、観ていて本当に気持ちのいい舞台でした。次回公演は、来年三月とのことで、それが今から待ち遠しいです。

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朝日泰輔

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朝日泰輔