時代を映す、女と男

新進劇作家育成プログラム 女と男、座面と境界

シアターZOO
演劇

2019 09/20

2019 09/23

UP:2019/09/26

札幌の若手劇作家・演出家を知る、とてもいい機会ということで、雨のなかシアターZOOに向かった。
シアターZOO新進劇作家育成プログラムの最終課題として、芸術監督・斎藤歩氏が次世代の3人の劇作家(20代後半)に指定した課題は、女と男の二人劇。舞台上にはベンチとフェンスのみ。さらに30分という縛りがあり、「次も観てみたい!」と思わせてくれる作品は現れるのか?女と男の台詞で勝負する90分に私はワクワクしながら、その時を待った。

①劇団・木製ボイジャー14号 【チース】作・演出 /前田透  キャスト/井上嵩之・飛山 薫 /設定/旅先の見知らぬ若い男女の駆け引き ・・・失くした財布と2千円の行方、そして蟹シュウマイ弁当との関係は?
②RED KING CRAB 【尋ねもの】
作・演出/竹原圭一  キャスト/木山正大・ひらりそあ  /設定/複雑な家庭問題を抱える兄妹の再会・・・がんを苦に自殺した母親の葬儀代をめぐって修羅場に
③プロト・パスプア 【命の漂泊】
作・演出/小佐部明広  キャスト/宮森峻也・メイケ祥子 /設定/ 事実婚状態の能天気なホームレスの男女・・・女の 妊娠発覚、しかしその先は他力本願でと考える

3話連続90分が終わった。どの作品も台詞が残らない。若い世代にとって先が見えない今の社会は強固にかたまって見えているのか、これ程までに将来に希望を持てないものかと頭を抱えてしまった。背景に共通している経済的な貧しさ、貧困だけが妙に前に押し出されてきて辛かった。確かに現実社会における恐怖みたいなものは、経済や社会状況が影響していると思う。さらに、人を闇に追い込むのも、犯罪に走らせるのも多くはお金だとわかっている。
それにしても、生まれ落ちた時から物に囲まれ、何ひとつ不足がないと思われている若者にとって、今という時代をこのように捉えているのかと思ったら、やはりカルチャーショックを受けたような気持ちになってしまった。

生命が生命である限り向き合い続けるリアリティと、人間が人間である限り向き合い続けるリアリティと、その同時代の精神が同調できるリアリティと、それぞれがまるで渋谷のスクランブル交差点を行き交うように、各世代で時空間の構成の在り方が見事なまでに違うのだと思い知らされた。どうかいっさいの絶望を拒否し、もっとも単純な生命の事実を見失わぬ台詞を次回は聞かせてほしいとお願いしたい。

Kazuko Tanaka

レポート

Kazuko Tanaka