宮田慶子×斎藤 歩 トークショウ
シアターZOOラボ2019 劇場のことを考える
2019 09/03
UP:2019/09/04
今回は劇団青年座の演出家・宮田慶子さんに、「劇場の役割とは何か」を、21年ぶりの札幌で劇場トークをしていただけるということでお伺いしました。
8年間(2010~2018)も新国立劇場の芸術監督を務められ、現在も精力的に新作を創造しながら、新国立劇場で若手の育成も続けている宮田さんの言葉一つひとつに人柄が滲み出ていて、自然体で楽しくて、アッと言う間の1時間でした。
冒頭、シアターZOOに足を踏み入れたところから話が始まります。中島公園のそばにある「地下劇場・シアターZOO」には、階段の下に何があるか分からないといった期待感や不安感や不気味さがあり、なにより地下=「アンダーグラウンド」という言葉とは裏腹に、「手がかかっている素晴らしい劇場」「空気の密度がいいわ」「いろいろな気が飛んでいる」「天井に突き抜ける」「人の手の数だけ匂いがする」等など、舞台を作り上げてきた人ならではの視点に、お誉め言葉をいただいたように、皆うれしく感じていました。
自ら「舞台と客席との橋渡し」といい、「劇場は多様性が魅力でいろいろあっていいの」「劇場は手をかけて育てるのがいい」「手をかけた分、答えてくれるのが劇場よ」と、まるでわが子を育てるように語ります。
「芸術監督が変われば、当然やり方も違う」「でもカラーは変わっても、クオリティは良くするの」「クオリティが一番の問題」「芝居の方向に粒子が揃うのがいい芝居ね」「最終的にはお客の空気なのよ」「芝居はすごく影響を受けるから、そこに漂っている空気感が最も大事なのよね」・・・もう誰にも止められません。楽しい話で時間も忘れてしまいました。
さて、もう一つ印象に残ったのが、島根県松江市にある公立劇場「しいの実シアター」。3年に1度「八雲国際演劇祭」を開催し、それこそ宮田さんの言うクオリティの高い各国の演劇を観るために全国からお客が集まり、また海外からの演劇人たちも、都会では感じられない八雲の風景と人々の温かさに感動し、再会、再来を約束して帰っていくという話です。
特に170ステージ上演の「セロ弾きのゴーシュ」は、必見!「再演に再演を重ねるところに舞台芸術の良さがある」と、力を込めます。
私も同感です。例えば「能」や「狂言」は再演に次ぐ再演で今日に伝えられたもの。古代ギリシャ劇にしてもさまざまにリメイクされて現代の舞台に生きています。新しい芸術祭が仕掛け人となって、戯曲の読み直し再上演の気運を演劇界全体に拡げ、大輪の花を咲かせてくれるようになればいいなと心からそう思った時間でした。