トリオ・ソナタで彩る午後
Kitaraバロック・アンサンブル・シリーズ~トリオ・ソナタで彩る午後
札幌コンサートホールKitara
音楽
2021 11/06
UP:2022/03/08
思いがけず至福の時を過ごすことができた。
古楽器による生演奏で初めて聴いた「音楽の捧げもの」のトリオ・ソナタ。
日頃親しんでいるモダン楽器の演奏とは別世界。古楽器の各声部が薄衣を重ねてゆくように独特の響きを作り出す。
言い換えれば、洋食のソース文化に慣らされた味覚と和風出汁との出会い。
最初は戸惑い、やがて味わい深く。
kitaraの小ホールはこの繊細な響きを忠実に客席に届けていた。
曲の合間に、出演者から古楽器や音楽様式に関する説明があった。
この分野では研究者、教育者としてもトップランナーの面々。
ときに軽妙な掛け合いを交え、平易な解説は学術臭を感じさせない。
古楽演奏の普及のためにはとても重要な事だと思う。
全員が東京藝大の部活の先輩後輩。いづれも小林道夫の薫陶を受けている。
「君たちは、私ではなくBachに育てられたんだよ」と言う恩師のエピソードが印象深い。
Bachとは「小川」を意味するドイツ語である。
小林と同じ流れに身を置き、同一の素材を血肉として育ち、演奏の喜びを共有し、プロとして世界に羽ばたいた彼ら。
親密なアンサンブルの理由が垣間見えた気がした。