「ヴァイオリンとピアノで巡る武満徹の風景」飯村真理・永沼絵里香コンサート
ヴァイオリンとピアノでめぐる武満徹の風景〜フランスの香り
2021 12/19
UP:2022/01/29
Studio26は南26条の住宅街にある瀟洒な洋風古民家を改築したサロン。元の持ち主が英文学者だったとのことで、外観はもちろん、内装も、そしてコンサートのために並べられた椅子も、上品で落ち着いた趣味の良さを感じます。定期的にコンサートが行われていますが、私は今回はじめてお伺いしました。
演奏会は「ヴァイオリンとピアノで巡る武満徹の風景」と題された、札響ヴァイオリン副主席奏者の飯村真理さんと、ピアニストの永沼絵里香さんによるデュオ。20世紀を代表する作曲家である武満徹の音楽の原点が、少年時代の戦時下に聴いたフランスのシャンソンであったことはよく知られているエピソード。それに因んで、武満の曲と、ドビュッシー、フォーレ、プーランクといったフランス人作曲家の歌曲をヴァイオリンとピアノによる演奏用に編曲したものを並べたプログラムでした。
武満ファンの私には堪えられない曲目ですが、少人数の穏やかなサロン・コンサートに難解な「現代音楽」が果たして合うのか、正直内心ハラハラしていたことも事実です。しかし結果は杞憂。むしろ落ち着いた空間で、演奏者との距離が近いこともあり、自然と音楽に集中できたことで、いつも以上に武満の曲の美しさを感じました。また、フランス歌曲と並べることで、この現代音楽の大作曲家の曲に溢れる歌心とも呼べるものが浮かび上がってきたようにも思います。高い演奏技術で、各曲のそうした旋律を歌い上げた飯村さんと永沼さんの演奏は素晴らしく、また、曲の合間に入る解説も、とても興味深いものでした。
いつもkitaraやhitaruで聴くのはとは少し違った、アーティストとの間により強いつながりを感じた演奏会。世界屈指の音響を誇るホールがあることはもちろんですが、こうしたサロンで質の高いコンサートが開かれているということこそ、札幌の音楽文化が充実している証なのかもしれないと思いました。
鑑賞データ
日時:2021年12月19日
場所:Studio26
演奏:
飯村真理(ヴァイオリン)
永沼絵里香(ピアノ)