札響の第9

「札響の第9」 in Kitara

札幌コンサートホールKitara
その他

2021 12/11

2021 12/12

UP:2022/01/29

師走の恒例行事ともいえる「札響の第9」を聴きに行ってきました。ところで、ご存知の方も多いとは思いますが、ベートーヴェンの交響曲第9番を、プロアマ問わずオーケストラや合唱団が競って年末に演奏するというは日本だけ。なので、日本人のへんな習慣として面白おかしく取り上げられることも多いのですが、しかし、では第9はいつ聴くのが正解なのでしょうか。

詳しく調べたわけでは無いですが、クラシック音楽の本場である欧米でも、オーケストラの定期演奏会でこの曲が取り上げられることは、まず無いようです。そして、これはレコード(CD)の話になりますが、第9の有名な録音といえば、1951年バイロイト音楽祭の再開を祝して演奏されたフルトヴェングラー指揮によるものや、1989年ベルリンの壁崩壊を記念して演奏されたバーンスタインの演奏などが思い浮かびます。

つまり、何か特別なときに、それを記念して演奏するという場合が多いようです。それを考えると、一年を振返り、来る年に希望を託す、年の瀬という特別な時期に演奏するのは、あながち間違いではないと思うのですが如何でしょうか。

そして肝心の演奏について。広上さんの指揮は、普通ならあまり目立たないような楽器の旋律を丁寧に拾い上げて、巨大な曲を組み立てていくといった印象で、非常に緻密でユニーク。しかも、この曲が持っている破格のエネルギーを余すことなく表現していて、まったくお見事。札響は、各パートの上手さと持ち前の美しい響きで、この指揮に応えて素晴らしい演奏。独唱と合唱が加わる第4楽章は、本当に感動的でした。

あらためて、年末に第9を聴くのは、いいものだなと思います。そもそも、自動車や電化製品のように、海外発祥のものに工夫をこらし付加価値をつけるといのはニッポンのお家芸。「師走の第九」もその一つ、と言えなくもない。経済の分野ではパッとしない近年の我が国ですが、文化面ではもっと輸出できるものがあるのかも。まだまだコロナ禍で、暗いニュースばかり目に付きますが、そんな上機嫌にさせてくれる演奏会でした。

鑑賞データ
日時:2021年12月12日
場所:札幌コンサートホールKitara
演奏:札幌交響楽団
札響合唱団
独唱:砂川涼子 谷口睦美 清水徹太郎 甲斐栄次郎
指揮:広上淳一

朝日泰輔

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朝日泰輔