映画「パブリック 図書館の奇跡」を鑑賞して
パブリック 図書館の奇跡
2020 07/17
UP:2020/11/18
大寒波の日、アメリカの公立図書館で、一夜の宿を求めたホームレスたちと、彼らに同調する図書館職員、そして彼らを追い出そうとする図書館館長、刑事、検察官らが繰り広げる騒動が描かれている。
原題は「The Public」。日本では、そこに「図書館の奇跡」と付く。言い得て妙である。本来公立の図書館は全ての国民のためにある。全ての国民の中にはホームレスも含まれている…という見解から始まっているのが、製作国アメリカ。つまり図書館(公共)とはどうあるべきかを再認識させる作品である。日本では全ての国民の中にホームレスが含まれていない場合がしばしばあり、とりわけ災害時には忘れられがち。だからこの映画は「奇跡」となる。「奇跡」とは常識では起こり得ないこと…だとしたら、日本向けのタイトルはこんな日本の社会に皮肉を込めていたのか? 警鐘を鳴らしたのか?
国が違えば見方も変わる。きっと米国では、原点に立ち返ろうという堅苦しい正論を、冴えない図書館職員が図書館の権利宣言のきっかけとなった「怒りの葡萄」の一説を唱える事で気付かせる。そこに図書館の「あるある」エピソードや友情を絡め、隣のお兄さん的ヒーロー(権力を持たない普通の人)物として楽しませてくれる。日本ではホームレスを排除する様を「しかたないよね」と片付け、前例がないという館長を「やむを得ないよね」と言い、公立である以上権力が入ることも致し方ないと捉え…これらを当たり前とした前提で、一発逆転、どんでん返しでひっくり返せるか? が見どころとされているようだ。私の中ではそんな両方の見方が交差していた。
最後は「あっ!その手があったか!」。冴えない一般人の武器は知識。「パブリック」を改めて考えさせられる面白い映画だった。
『パブリック 図書館の奇跡』
全国公開中
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配給:ロングライド