土井泰志ピアノリサイタル メシアン「幼子イエスに注ぐ20の眼差し」全曲演奏会

第1469回札幌市民劇場 土井泰志ピアノリサイタル~「幼子イエスに注ぐ20の眼差し」全曲演奏会

ふきのとうホール
その他

2019 12/22

UP:2019/12/25

クラシック音楽には「現代音楽」というジャンルがあります。そこには、今まさに作曲され初演を迎えたばかりの曲も含みますが、20世紀の大戦後に書かれた作品を指す名称と考えていいでしょう。しかし、この「現代音楽」という言葉には、単にある時代以降から今現在にかけてつくられた作品という意味以外に、もう一つのイメージが付きまとっています。それは、「難解である」ということです。

耳を覆いたくなるような不快な不協和音の連続で、どこに旋律があるのかまったくわからない。また、その逆の極端な例として、ジョン・ケージ作曲の「4分33秒」という曲では、ピアニストはピアノの前に座っただけで、一音も音をだしません。「ゲンダイオンガク」は本当に音楽なのか?難解で一部のマニアだけが聴くジャンル、それが「ゲンダイオンガク」と思っている方は多いでしょう。

20世紀フランスを代表する作曲家オリヴィエ・メシアンは、まさに「現代音楽」の作曲家です。その例にもれず、モーツァルトやベートーヴェンのような聴きやすい音楽ではないかもしれませんが、独特の音楽表現で、音による法悦の体験と言いたくなるような、他では聴けないような音楽をつくりだした作曲家です。

そのメシアンが1944年に作曲したピアノ曲「幼子イエスに注ぐ20の眼差し」の全曲演奏会が12月22日にふきのうとうホールで行われました。演奏時間は二時間以上。超絶技巧を要する難曲にして、20世紀ピアノ音楽の金字塔ともいうべき作品です。

演奏は札幌在住のピアニスト土井泰志氏。プロフィールによると東京芸大大学院の音楽研究科を修了。海外のコンクールでも受賞経験をお持ちで、現在は札幌市内の高校にお勤めとのこと。

その演奏は、とても丁寧な印象を受けました。超絶技巧を要する曲でありながら、そうした技巧をひけらかすのではなく、メシアン独特の音楽語法を丁寧に表現して、美しい演奏であり、感動的ですらありました。

モーツァルトやベートーヴェンなど、所謂「クラシック音楽」だけがあれば、音楽は十分なのでしょうか。その作品の質からいって、そうだという答えもありなのかもしれません。しかし、この時代を生きているからこそ生まれる音楽もあるはずです。現代が過去と違うように、そこでつくられる音楽も、様々な理由から、それまでの音楽とは大きく違っているかもしれません。しかし、そうした「現代音楽」にも、心を揺さぶるような素晴らしい作品と演奏があることを、改めて教えてもらった演奏会でした。

朝日泰輔

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朝日泰輔