『真説カチカチ山/ロングクリスマスディナー』インタビュー
教文オペラ オペラ公演「真説カチカチ山」「ロングクリスマスディナー」
2019 12/14
|ー2019 12/15
UP:2019/11/03
「出会い」が大切なのはアイドルのコンサートも、オペラも同じ。そのうえで、予備知識がなくても感動できるダイナミックな世界を、演出家として見せたいと思っています。
リハーサルの様子
朝日:お話をうかがって、オペラに何故演出が必要なのかということがすごく腑に落ちました。昨年、札幌には立派な劇場(札幌文化芸術劇場hitaru)ができました。これをきっかけに、オペラに興味をもった人もいっぱいいると思うのですが、演出家として、オペラ初心者の方に、劇場へ足を運んでもらうために心がけていることなどはありますか?
三浦:「出会い」というものがものすごく大事だと思います。初めてオペラを観る人にとっては、チケットの値段の高かったり、上演時間の長かったりと、いくつか高いハードルがあると思います。
でも、例えばうちの娘はアイドルが好きで東京ドームとかに行くんですけど、チケットは凄く高い。しかもグッズとかも買うからすごくお金がかかる。もしも娘が好きなアイドルの曲を僕が聴こうとしたら、やっぱり縁遠いものだと思います。何度も曲を聴いて、メンバーのキャラクターも分かっていたら面白いとは思うのですが。
だから、ある意味ではアイドルだってオペラと一緒で、どうやって最初に出会うか、ということが大事なんだと思います。そうした時にアイドルなら番宣をしますよね。例えばミュージカルやテレビドラマに出演するとなれば、朝のワイドショーとかで必ず番宣をします。あれってやっぱりものすごい効果があるのですが、オペラには全然そういうものがない。そしたら人が来るはずもないな、と思うんですよね。それは仕方ないところもありますし、番宣に取り上げられるようなものに近づく努力もしたほうがいいんだろうとも思うんですが、でも、それだけじゃなくて、多くの人を呼ぶためには、演出家ができる事があるんじゃないかと思うのです。
僕が初めてオペラを観たのはたまたまで、ある縁があってのことだったのですが、とにかくすごく面白いと思ったんですよね。オーケストラピットがあって、音楽がうわぁって聴こえてくるし、舞台の緞帳が開いた時に奥行きのある舞台がうわぁってあるし、そのダイナミズムに僕は魅せられました。もちろんレコードを聴くのも好きなのですが、自分が受け身になって音楽を聴いているだけではなく、劇場の中でそこから聴こえてくる音楽をや世界を積極的に観ようっていう気持ちに僕はなれたんです。
だから僕は自分が演出をする時には、とにかくそういうダイナミックな世界を作ることを大切にしようと心がけています。幸いにも僕はこれまで色々なところでやって多くの場合面白いものができたと思います。面白くなくちゃいけない。面白いというのは媚びるってことじゃなく、人に何かを訴えることだど思います。必ずしも分からなくてもいいと思うんです。何かがそこで「ぐわぁっ」と伝わるというのが必要なのかなって思うんです。
同業者のことを悪く言うつもりもないのですが、オペラに関わる人の中には、自分たちが高尚なものをやっているという意識が高すぎて、勉強をしないとオペラは分からないとか、観る前に必ず勉強してきてくださいよとか言う人がいるじゃないですか。そういう人たちの気持ちは分からない訳じゃないんですが、でも僕は、それをお客さんに強いているうちは絶対にダメだと思います。観た人に対して、もっと何かを知りたいと思わせないと。僕の娘が好きなアイドルグループにも世界観みたいなものがあって、マニアになればなるほど、知識が増えるし、そういうのがあるからこそまた行きたいと思うし、そうやって多くの人が興味を持ったりもするから、関連する本が売れたりもします。
だから僕は、先に勉強してから来なきゃいけないっていう考え方は絶対におかしいと思います。例えば絵画に関する本って色々出ているけど、あれを読まなければ絵の何たるかが分からないということではありません。絵画が強いのは、そこにぽんとあるものが、「ああ、きれいだな」って思えるからです。僕は映画も好きですが、できるだけあらすじを知らないで行くと、予想以上の事があったりします。僕が人生の中で本当に感動した出会いっていうのは、予備知識がなくて出会ったものが圧倒的に多い。ゼロから旅を始めるというか。その上で、何かが出てくる最初のイメージから入って、何かが出てきたら次に移るっていう。オペラもそうやって見せたいと思っています。
公演情報
教文オペラ オペラ公演「真説カチカチ山」「ロングクリスマスディナー」
日 時:2019年12月14日(土)17:00開演、 15日(日)14:00開演
会 場: 札幌市教育文化会館小ホール
料 金:指定席6,000円 自由席5,000円
指 揮:河本洋一
演 出:三浦安浩、三浦奈綾