「風景と音楽」~谷川俊太郎のことばめぐり~
谷川俊太郎著「ひとり暮らし」の言葉を音楽とともに味わうコンサート
2019 12/14
UP:2019/12/20
山の手の閑静な住宅街にある白い建物が今日の目的地です。
北1条宮の沢通から1本入った所にあり、目印は黒板のスタンド。こんな所にステキなカフェが!中に入ると白とナチュラルな木の素材をモチーフにしたインテリアとラウンドした壁の大きな窓が目を引きます。
谷川俊太郎氏の詩に、息子の賢作氏が曲をつけた数々の歌の中から選ばれた「ことばめぐり」のコンサート。
美しく澄んだ2人のソプラノ歌手(高橋雅子さんと柳生たみさん)と物語るような旋律のピアニスト(吉野智子さん)によるコラボレーションです。
柔らかな質感をもって漂う音楽と詩の時間は音楽から詩へ、また詩から音楽へと受け渡されながらゆっくりとコンサートは始まりました。
楽しい曲、うれしい曲、時にはせつない曲など、物語の読み聞かせを聴いているような心地よい空間が広がり、いつの間にか私の気持ちのオアシスになっていました。
なんとも素朴でシンプルな曲だけど、心に沁みる曲ばかり。その詩から発想されるアンサー曲のような構成も楽しくて、さらにそれぞれがお互いに補い合い高めあうことで、私の想いも重なり胸が一杯になりました。
一方詩人の感性は少し冷めていて、絶えず人間の矛盾に満ちた複雑さをも色づけのスパイスにしている目線には脱帽です。人とは矛盾だらけの存在と言い、だからこそ、面倒くさくて、愛おしいと。
そのユーモアのある内容が面白い「おかあさん」という詩の一部をここに紹介します。
ひるま がっこうからかえってきたら
かれーつくりながら びーるをのんでいた
おかあさん またのんでるっていったら
はい またのんでますっていった
それから おかあさんはでかけた
吹き出しそうな話に「あるよね~」の声が聞こえた。穏やかな日常の中にあるささやかな事象からも幸せや歓びを見つける谷川さんの観察眼は特に深く、その言葉に癒され、どれも素敵でずっと聴いていたかった時間でした。きっと私にはこの時間が必要だったのでしょう。窓の外はもうすっかり暗くなっていました。