【札幌国際芸術祭】アーティストインタビュー:プシェミスワフ・ヤシャルスキ、ライナー・プロハスカ

札幌国際芸術祭2020プレイベント「きる・はる・つなぐ・つみあげる」

札幌市役所 1階ロビー
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2019 11/20

2019 11/24

UP:2020/06/16

温暖化を止めるために、個人には何ができるのか

田中:シェモさんに質問です。以前に韓国で作られた「Global Warming Control Unit」という作品では、煙突を3本たてて、加湿器で雲を作っていますよね(※)。地球環境に警鐘を鳴らす作品に見えるのですが、しかし、3つの煙突から雲が出ただけで地球温暖化に対して効果があるとはとても思えない。一見すると無駄なようにも見えるのですが、ここにはどんな意味があるのでしょうか。

シェモ:もちろん、作品に実際についている煙突の効果はあまりにも小さく、限定的だというのはわかっています。この作品に関しては、人に知ってもらう、気付いてもらう、という機能の方が大きいと思います。地球に悪影響を与えているのは大企業や工場などであって、自分とは関係がないと思っている人が多い。この作品では、何かアクションを起こす、人に知ってもらうということの意味を示すのが重要だと思っています。ひとりの人間ができることは小さくても、直接的に温暖化に対して働きかけること自体はできるし、実際にできていると、考えています。

Przemyslaw Jasielski, “Global Warming Control Unit, 2010”

 

田中:あの作品が作られた場所で起こっている環境問題と何か関連していますか?

シェモ:そうですね。この作品を作った場所では、潮の満ち引きを利用した潮力発電所の開発が進められていました。潮の満ち引きを利用するというと自然環境への負荷が少ないと思われがちですが、実際には、その土地の環境や生態系を破壊しながら建設が進められているものでした。

しかもそこは元々良い漁場で、漁業を生業にしている人もたくさんいたのですが、開発で漁ができなくなったり、移住を余儀なくされたりと、生活環境が変えられてしまいました。それまで漁師だった人が、政府から突然「農業をやりなさい」と言われてぶどうを育てさせられたりしたこともあったようです。

田中:今の話を聞いて、シェモさんの作品の意図がよくわかりました。

シェモ:オッケー、グレイト!

※雲には太陽光を反射し、温度を下げる効果がある。


「説明すること」と「解釈すること」の違い

シェモ:テクノロジー以外の観点では、私は「紙」という素材に注目して制作を行っています。例えば、以前に行ったプロジェクトでは、紙で橋を作ったことがあります。紙というと非常に破れやすいものと思われがちですが、ちゃんとした方法と技術があれば、実はすごく強固で、重みに耐えられるものになります。これは、今回札幌市役所で行なったワークショップでもお見せできたかと思います。

札幌市役所で行われたワークショップの様子。紙とボンド、木材とラチェット式ベルトを使い、椅子や構造物など様々なものが作られた。(Photo by Noriko Takuma)

 

中川:今回のワークショップでは、考えることをとても大切にしていると思いました。

ライナー:「考えることを大切にする」というのはまさにその通りです。今回のワークショップの参加者には、基本的な技法を教えた上で、どう作るかは自分たちで考えてもらうよう言いました。すると本当に彼らで考えて、いろんなものを創作してくれました。そのことがまた、私のアイデアにフィードバックされ、そして今回出来上がったものにもつながってきたのです。ですから、今回のワークショップはとても良いものでした。

シェモ:これまで色々なワークショップを行いましたが、アートギャラリーや、美術学校、美術館など、美術に関係する場所で行うことがほとんどでした。誰でもアクセスできる場所でワークショップを行ったのは今回が初めてです。しかもここは市役所で、普通のオフィスがある。例えば公園などではもう少し時間に余裕のある人や、何か他の目的で楽しむ人がいるかもしれません。しかし市役所は来る人の目的がそれとはやはり全く異なるので、そのような意味でもこうした場所でワークショップを行うのは初めての試みでした。しかし実際に行なってみると、参加者もすごく楽しんでくださり、それが何より自分には楽しく、良い経験になったと思っています。

杉谷:ワークショップの会期中、参加者に対して毎朝ミニレクチャーを開催していたと聞きました。恐らく作品のことを参加者に説明していたと思うのですが、ここにはどのような意図があるのですか。

ライナー:今回参加した人たちはきっと、そもそもなぜ紙で工作をしたり、木材を組み上げたりしているのか疑問に感じたと思います。それならばやはり、参加者の行っていたことが実はアートの文脈にきちんとつながっていると伝えた方が良いと思いました。それは、単にここで行っていたことの意味が分かるということ以上に、他のアーティストの作品を見た時にもその状況が分かるとよいと思ったからです。

ワークショップの期間中、参加者に対して毎朝ミニレクチャーが行われた(Photo by Noriko Takuma)

 

齋藤:作品を言葉で説明することを、おふたりはどう考えますか?作家によっては、説明を嫌がる人もいるように思います。

ライナー:もし作品がとても単純だと、鑑賞者はすぐに作品を理解できたと思うでしょう。でも、そういう時こそ言葉で説明したいと思うのです。作品の背景にどういうことがあるのかを、すぐに深く理解することはできないでしょうから。

アーティストの中にあまり説明したがらない人が沢山いるというのはよく分かります。説明をするのは不可能だと思う人がいるのも理解できます。作品はアーティストが作品として作って、見た人が自由にその人なりの解釈をするものでしょうし、私はそういう考え方も正しいと思います。

シェモ:説明することと解釈することは、異なることなのです。つまり、何が起こったか、どんなことを考えたかについて説明することはできますが、そのことと、どういう風に作品を見るかはまた別の話です。ですから、アーティストが直接説明するのは、基本となる考え方だけです。そしてその後に、学芸員や美術の専門家たちがその作品を見ていろいろな話をして、そこで初めて異なる考え方や解釈が生まれるのです。アーティストが説明することはそれとはそもそも全然違うことでしょうね。

そもそも私たちは、鑑賞者と話すことが好きなのです。鑑賞者との話で色々なことを聞けると、それが新しい発想につながり、また新しい作品が生み出せると考えているので、どんどん話すことが必要だと思っています。今日のインタビューも、まさしくそれと同じことです。質問に答えることで、またさらに新しい考え方が生まれることにつながると思っています。

(3ページ目に続く)

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