【札幌国際芸術祭】アーティストインタビュー:プシェミスワフ・ヤシャルスキ、ライナー・プロハスカ

札幌国際芸術祭2020プレイベント「きる・はる・つなぐ・つみあげる」

札幌市役所 1階ロビー
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2019 11/20

2019 11/24

UP:2020/06/16

3年に1度、札幌を舞台に開催される札幌国際芸術祭(略称:SIAF[サイアフ] )。世界中から様々なアートが集結する祭典の3回目が、今冬、2020年12月から2021年2月に渡って開催される予定です。

本開催に先立って、2019年の11月、プレイベント「きる・はる・つなぐ・つみあげる 市役所で体験!?〜現代アートの作品づくり〜」が開催されました。5日間にわたるワークショップが行われたのは、札幌市役所のロビーという意外な場所。飛び入りも含めて多くの人が参加しました。

SCARTSアートコミュニケーターは、ワークショップの仕掛け人であるふたりの作家、プシェミスワフ・ヤシャルスキさん(愛称:シェモさん)、ライナー・プロハスカさんにインタビューを行ないました。おふたりがこれまで考えてきたことや、作ってきた作品を掘り下げながら、謎多きワークショップに込められた意図を読み解きます。


・インタビュー日時・場所:2019年11月27日(水)、札幌市役所 1階ロビーにて
・参加者:石黒由香、杉谷紬、田中かず子、中川貴博、萩中留美子(SCARTSアートコミュニケーター)
・通訳:細川麻沙美、松本知佳(札幌国際芸術祭実行委員会事務局)


<ワークショップ概要>
SIAF2020 プレイベント ワークショップ
「きる・はる・つなぐ・つみあげる 市役所で体験!?〜現代アートの作品づくり〜」
・開催日時:2019年11月20日(水)〜24(日)12:00~18:00
・会場:札幌市役所 1階ロビー(札幌市中央区北1条西2丁目)
※ワークショップの様子は、以下のレポートも併せてご参照ください。
きる・はる・つなぐ・つみあげる 体験記



「ユーモア」の視点から、テクノロジーを捉え返す

ライナー・プロハスカ:最初に、私たちがこれまでに作った作品をご紹介します。私の作品はいくつかのテーマに分類できるのですが、ここではシェモと一緒に取り組んでいる「ナンセンス・テクノロジー(※)」というプロジェクトにつながるものを見ていただきましょう。

これは私の作品ですが、2013年にモスクワ・ビエンナーレに出展した「Enlightenment /KRFTWRK」では、発電機を使いました。屋外に大きな階段があり、鑑賞者はバケツに水を入れてそこを上ります。階段を上ったところで水を作品に流し込むと、水力発電と同じ原理で電気が作られます。この作品には黒いボックスが設置してあって、中には作品のキャプションが書いてあります。箱の中は真っ暗なのですが、鑑賞者がバケツの水で電気を作った時だけ明かりがついて、キャプションが読めるようになっています。このようにして鑑賞者は、バケツいっぱいの水でどのくらいの電気を作れるのか、ということがわかるようになっています。

Rainer Prohaska, “Enlightenment/KRFTWRK”, 2013

 

一同:おもしろい!

ライナー:このようなアイデアを発展させ、シェモと取り組んでいるのがナンセンス・テクノロジーです。

プシェミスワフ・ヤシャルスキ(シェモ):ライナーと私が共通して考えているのは、芸術というのは全ての物事に対して問いを投げかけるものではないか、ということです。ナンセンス・テクノロジーであれば、問いの対象はテクノロジーになります。最新技術の凄さを見せつけて観客をあっと言わせるような作品ではなく、「そもそもテクノロジーってどう使えばいいの」と疑問を投げかけるようなことをしていきたいと考えています。

「ナンセンス」というくらいですので、ちゃんとしていないもの、笑ってしまうようなものを含めてテクノロジーを捉えています。私たちはテクノロジーを批評的に捉えていますが、それは必ずしも悪い面ばかり取り上げるわけではありません。良い面と悪い面の両方を考えながら、テクノロジーに対して問いを投げかけています。

私はもともとコンセプチュアルアートを学んでいたので、最初は「考える」ということを重視して芸術に取り組んでいました。しかし、勉強している間にどんどん技術的な部分に興味がシフトし、特に2000年代以降になると、積極的に新しいテクノロジーを使って作品を作っていくようになりました。その理由は、この時代、アートとテクノロジーの境界がどんどん無くなっていることに加えて、私たちの生きている環境や社会がもはやテクノロジーから切り離せないと感じるようになったからです。

ライナー:私は5年くらい、技術的なことを学ぶ学校に通っていました。車がどう作られているかとか、電気の仕組みを学んでいたのですが、だんだんその勉強が嫌になってきました。車にせよ電気にせよ、それを作るためには巨大な工場と、大勢の従業員が必要です。そうすると、ひとりの個人の影響力があまりにも小さいのではないか、ということに気付き始めたのです。

私はテクノロジーを扱うならば、もっとユーモアがあるものを作りたいと思っています。私の作品は、巨大な工場で作られるものに比べるととてもシンプルです。例えば北京のプロジェクトで使った自転車は私がひとりで作りました。これは現代の車社会への批判と見ることもできますが、そこにはクリエイティビティもあります。でもあまり安全な乗り物ではないから、乗る人に「気をつけて乗らなければ」と思わせることもできます。

Rainer Prohaska, “Enter Beijing”, 2008

 

シェモ:作品を作るうえで「面白さ」や「楽しさ」というのはとても重要です。ナンセンス・テクノロジーの作品では、世の中の状況や物にユーモアを加え、ちょっと違った角度で見てもらいます。そうすることで、既存の見え方や感じ方を一気に変えることができると思っています。例えば本来4つある車のタイヤの本数を少しずつ増やしてみたり、減らしてみたりするだけで状況は変わってきます。そうしたものを自分達も楽しみながら作っています。


※ナンセンステクノロジー(Nonsense Technologies)
シェモさんとライナーさんによるプロジェクト。「ナンセンス・テクノロジー」は作品制作や展示を通して実装されるコンセプト/ストラテジーで、科学、アート、テクノロジーをさまざまなレベルで結びつける。彼らは、利便性や生産性が優先される社会に対し、ユーモアに富んだ作品を通して問題提起をしている。
http://www.nonsensetechnologies.com/


「完璧なAI」が発明された時、人間はどうなるのか?

シェモ:私が個人で制作した作品もご紹介しましょう。この「Emotions Control Unit」という作品は、いわば「感情を持った機械」です。木でできた箱に、「怒り」や「驚き」などと書かれた目盛りがついています。作品にはセンサーがついていて、鑑賞者の動きや状況に合わせて目盛りが変化するようになっています。例えば人が騒がしかったり照明が暗くなったりすると、「イライラしている」という風に表示されたり、逆に周囲の状況が良い感じになると「楽しい」という風に表示されたりします。

見ての通りこの作品の見た目はただの木の箱で、人の形もしていません。でも面白いのは、鑑賞者はこの作品の前で、まるで人間を前にしているかのように振る舞うんですよね。話しかけたり、歌いかけたり、中には抱きついたり、怒るかどうかをチェックするために殴りかかった人もいました。

一同:(笑)

Przemyslaw Jasielski, “Emotions Control Unit, 2015”

 

石黒:私もこの機械に会ってみたいと思いました。作品のコンセプトをもう少し詳しく教えてください。

シェモ:もしも完璧なAIが発明されたら、そしてそれに人間が出会ってしまったら、ということを考えていました。その時我々は、AIに影響されずに立ち振る舞えるでしょうか。結局我々の行動はAIによってコントロールされてしまうのではないか、ということを、技術的な観点も含めて考えることがコンセプトです。

ライナー:私の作品も、デジタルなものが溢れた今の世界をちょっと批判的に見てみるものが多いです。80年代頃からコンピュータに親しんできたのですが、当時コンピュータやインターネット文化は、いろいろな事がシェアできる、誰にとってもオープンなものだと思われていました。しかし今や一部の巨大企業があらゆるものを必要以上にデジタル化し、社会をコントロールする道具にまでなっています。私が取り掛かっている新しいプロジェクトでは、そうした問題を考えることがより大切になってきています。

(2ページ目に続く)

インタビューに答えるシェモさん(左)とライナーさん(右)
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