渡邊希さん(漆造形家)インタビュー

インタビュー

創世スクエア
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2021 10/02

UP:2023/01/11


渡邊希《舞》乾漆
©︎ Forward Stroke inc. Art direction by TOWN ART Co. Ltd.

 

創世スクエアに常設されている作品《舞》は、3つのS字状(波状の繋がり)二組で表現されています。モチーフについて教えてください。

劇場へ向かう門の役割になるということで、舞台鑑賞の前後に高揚感を高める導入空間となるように考えました。舞台幕が舞っているような、布が大きく自由にうねっているような、そんなインスピレーションがベースになっています。また、このご依頼が舞い込んだ前日、釧路へ行っていてその足で直接打ち合わせに向かいました。鶴が大空へ舞った時のドラマティックなイメージが頭の中に強く残っていて、そんな流れもご縁に感じ、その記憶を作品に落とし込み「布が鶴の舞の如く軽やかに舞う」というイメージで構成しました。

 

入口正面の作品は、2つの波の先端が離れていて、金色の二片は裏返しになっています。出口正面の作品は、金色と朱色のウエーブが全て表向きのまま交わっています。どのような意図で2作品の違いをこのように表現されたのでしょうか?

当初は想定していなかったのですが、乾漆を型から外した瞬間に内側の形もイケる(使える)と思いました。いくつかのパーツを反転させて、バランスに変化をつけた方が表情が面白いと思ったのです。

 


渡邊希《舞》乾漆
©︎ Forward Stroke inc. Art direction by TOWN ART Co. Ltd.

 

これは個人的な解釈ですが、劇場へ向かう時に見える作品は、演奏に対する期待感はあるものの気分は混沌としている状態で、それを表すように二片が裏返しで繋がっていない。帰りに見える作品は、すっかり芸術を堪能して、お互いに感想などを話し会うことができる満足感を表現するかのように、表の形が交わっていると感じました。

そのように思っていただけるなら嬉しいです。作者の意図よりもずっと創造力豊かで面白いですね。ちょっと動きがあったり遊び心があると、ストーリーも生まれやすいわけですね。設置空間が対面にあるので、通路空間も作品の一部になり、より大きな空間を演出できるんですよね。エスカレーターに乗った時の動線、時間も演出の一部になったような気がしています。

 

S字状の二組に金色と赤色を選ばれた理由は何でしょうか?帰りは金色の方が大きくなっていますね。金は幸せな感じがします。

朱は、華やかで、力強く、ドラマティックな色だからです。金は、確かに幸福感を感じますよね。大きい金パーツは、自然光が当たるとより柔らかで優しい印象になります。大阪の新ダイビルに金の漆造形を入れた際、「吉永小百合みたいだなぁ」とダイビルの社長さんにご感想をいただきました。品があるということを確信しましたね。

 

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