ひらくラジオ③「ぶっちゃけ、アートコミュニケーションってなに?(前半)」ゲスト:伊藤達矢さん、ひらくメンバー

SCARTSアートコミュニケーター「ひらく」1期生 卒業(仮)展

札幌文化芸術交流センター SCARTS(札幌市民交流プラザ1-2階)
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2022 02/26

2022 02/28

UP:2023/01/11

コロナ禍でのアートコミュニケーション

 

藤田|先週、札幌芸術の森美術館での「ひらくみかたツアー」というプログラムで、参加者と一緒に展示作品を見て回ったんですよ。もう話が止まらなくなったんですよね、2人で1時間ぐらい話をしながら回りました。みんな、人と触れ合いたい、コミュニケーションを取りたいという気持ちがあるんだなと実感しました。コミュニケーションはよくキャッチボールに例えられますが、そこで豪速球を受けるのではなく、相手に気持ちよく投げてもらうのが私たちの役割なのかなということを、そこでちょっと考えました。

 

 

齋藤|札幌芸術の森美術館で開催されていた「きみのみかた、みんなのみかた」という展覧会にSCARTSアートコミュニケーターが行って、ワークショップなどを実施したときのお話ですね。そこで藤田さんは対話による鑑賞を行ったんですよね。最初に比べると、話の受け取り方などは変わりましたか?

 

藤田|今でも余裕はないですが、毎回新しい驚きはありますね。その方が今日も来てくださって、また2人で一緒にSCARTSの常設作品を見ていたんですが、話が尽きないというのは不思議ですね。

 

齋藤|なるほど。八木澤さんはどうですか、コロナ禍とアートコミュニケーションという話でいうと。

 

八木澤|コロナが流行し出した頃は本当にどうしたらいいんだろうと思っていましたが、今は可能性を探す方に頭がシフトしていて、今できることは何だろうということを考えています。ワークショップの時の伊藤先生の言葉の反省をしながら。

 

齋藤|伊藤先生の言葉、かなり身に染みたんですね。

 

八木澤|1年以上引きずっていましたから。でもそのおかげで、次にやるときはどうしようと考えることができていた中でのコロナ禍で、デジタルの世界でも可能性を探ってみましたが、なかなか難しい部分もありますね。コロナ禍でのアートコミュニケーションの難しさに直面したまま、まだ答えは見つかっていません。

 

 

齋藤|そうですね。「新しい日常」という言葉もありますが、やむなく日常を変えなきゃいけないという状況で、それをポジティブに転換するのはなかなか難しいですよね。そういう意味では、普通だったら縁がない人たちと出会える場所でどうやって話をしたらいいのか、それを考えられるというのは大きな意味がありましたね。

 

伊藤|大事なのは、アートコミュニケーターになった人たちが改めてそれを確認していくことです。ちょっと特別な体験をした人たちがそれぞれの地域や会社に戻ったときに、まわりに影響を与えて、何かが醸成されていくというのは理想的ですよね。アートコミュニケーターの活動では本質的な話が重視されるので、そういう大事な話ができる人がいる社会はいいと思うんですよ。

 

齋藤|分かります。大学の講義もそうですよね。

 

伊藤|自分の頭で考えなくてもいいほど情報が溢れている時代ですが、アートコミュニケーターたちが、誰かと対話をしたり考え続けたりするためのきっかけになる、大きく言うとそれが文化をつくるということです。今、孤独や孤立という問題があって、あえて孤独になる人もいますが、望まない孤立というのもありますよね。

 

齋藤|はい、「孤独」と「孤立」は違いますね。

 

伊藤|それは本当に一人では解決できなくて、やはり一人一人が社会の中にいることの大切さというものを、文化事業の面からも考えるべきだと思います。

 

齋藤|そうですね。伊藤先生は「社会包摂(しゃかいほうせつ)」という言葉をよく使われますよね。そのポジティブな側面は、社会で人が孤立しないようにしていくということだと思うんです。無論、包摂することが無自覚な暴力性を持ってしまうこともありますが、孤立を防ぐことは社会の喫緊の課題ですよね。だから、会議もオンラインでいいというのは本当に危ないんじゃないかと。

 

伊藤|でも最近、オンラインの方が楽なんだよね…。正直言って。

 

齋藤|だから今日はわざわざ札幌まで来てくれてありがとうございますという話で(笑)。怖いのは、オンラインに慣れてしまうと、そこで失っているものに気づかないということです。実際に会って話をすると、オンラインとは情報量が全然違うわけですよ。アートコミュニケーションは、それに気づかせてくれる契機にもなり得るのかなと思いますね。

 

(5ページ目「それぞれの思いや発想を形にした卒業展」に続く)

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