~五月の空と草と海~モンゴルの伝統曲を中心に

ガーデンライブ・嵯峨治彦(馬頭琴、喉歌、ドシプルール)

レッドベリースタジオ
音楽

2020 05/26

UP:2020/05/28

長かった緊急事態宣言が解かれ、気は抜けないけど気持ち的にはちょっと明るくなった昨日(5/26)、レッドベリースタジオの屋外ライブに行って来ました。馬頭琴奏者の嵯峨治彦さんの素敵な演奏とトークです。

モンゴルの弦楽器「馬頭琴」、二弦しかないシンプルな楽器からあれほどまでに豊かな音色が醸し出されるとは・・・・驚きです。馬頭琴の音色は優しく切なく、まるで草原のチェロの調べのように、全ての生きとし生ける物の幸せを願っているかのように私の耳には届いていました。
北にロシア、南に中国、海のない国モンゴルには、「草の海」があると氏は言います。一瞬ですが、草原を駆け巡る「スーホの白い馬」の物語が脳裏に浮かび、乾いた遠い景色が見えた気がしました。もちろん、誰もが人間味のある表情豊かな演奏に引き込まれていったのは言うまでもありません。

一人二重唱の「喉歌」は初めて聞きました。
共鳴音はとてもよく通ります。また、とても高い音なので、馬頭琴の音にかき消されることはありませんでした。
むしろ音源がどこにあるかも分からないきれいな笛のような音の合掌が加わって、心を癒す音楽以上に、ひときわ放っていたのが遊牧民の神秘性でした。
元々日本人の常識とかけ離れているからこそ、人それぞれに多様な印象を持たせてくれるのでしょうか・・・ふとそんな事を思いました。

最後に「ドシプルール」ですが、この名前も初めてです。
モンゴルの北にあるトゥバ共和国の弦楽器だそうで、形はいろいろ、ハート型やレモン型、それに馬頭琴と同じ台形で箱型もあるそうです。喉歌の伴奏楽器として使われるとのこと。異なる点は馬頭琴のように弓でこするのではなく、弦をはじく、どちらかというと日本の三味線のイメージに近いかもしれません。

異国の楽器の音色に不思議なほど郷愁を感じ、この楽器を駆り一人三役もこなす嵯峨さんの深い音楽性には彼の生き方が色濃く反映されていると感じました。
久しぶりに自分が求める幸せな瞬間に立ち会えたことに感謝です。

Kazuko Tanaka

レポート

Kazuko Tanaka