~すべてはシャンパンの泡のせい~

ヨハン・シュトラウスⅡ世 オペレッタ「こうもり」

札幌文化芸術劇場 hitaru
オペレッタ

2020 12/13

2020 12/15

UP:2020/12/20

何回くり返して見ても少しも退屈せず、見るたびに最初から最後まで楽しさが持続する・・・・そんな舞台がまれにあります。それがヨハン・シュトラウスⅡ世の最高傑作:喜歌劇「こうもり」です。

「こうもり」は、フルオーケストラの全3幕のオペレッタ。“今を楽しもう!”という非日常の楽しい舞台。結局、歌や踊りで、笑ってしまうような男女の駆け引きを目立たせたドタバタコメディと言ったら、言い過ぎでしょうか。
しかし、何といっても曲が素晴らしく、そのうえ上品で全体のバランスが良く、見る人を幸せにさせてくれるのですから、何度でも見たくなってしまいます。
ウィーンが誇る美しいウィンナ・ワルツとポルカに溢れ、最後は踊りながら“すべてはシャンパンの泡のせい”と、シャンパン賛歌の大合唱で、一気に観客の心を高揚させてくれる舞台です。

まずアレグロ・ヴィヴァーチェで始まる序曲が本当に素敵でした。クリストファー・フランクリンが指揮する札響のオケは、美しい旋律やエキゾチックな旋律など、有名フレーズをしっかり鳴らし、完成度の高い演奏を見せてくれました。これだけでも聴きどころが満載で、何だか得した気分になりました。

もちろん、「こうもり」には魅力的なアリアが数多く出てきます。例えば、アルフレードが甘く歌う「いとしい人よ、さあ飲もう」、軽やかなアデーレの歌「侯爵様、あなたのような方は」などです。が、何と言っても、圧巻はアイゼンシュタインの妻ロザリンデが2幕で歌う「チャルダッシュ」だと言えるでしょう。
ハンガリー舞曲のスタイルをコロラトゥーラソプラノで、前半はゆっくりしたラッスス、後半は躍動的なフリスカと声のコントロールが難しいこの曲を情熱的に、しかも安定感抜群にキレ味良く歌い上げ、世界の誰もが抱く感情が音楽には凝縮されていることを証明していました。総じて格調高い、華やかな舞台でした。

飲みに始まり、飲みに終わる「こうもり」。
みなさんも“おうち飲み”で、少し早いですが、よいお年をお迎えください。

Kazuko Tanaka

レポート

Kazuko Tanaka