魂のアニメイト

西区文化フェスタ2020オープニングイベント ~クラシックとアイリッシュのしらべ~

ちえりあホール
音楽

2020 01/31

UP:2020/02/07

大陸を隔てた西と東の果ての島国、アイルランドと日本。
この妖精の国が、八百万の神々の日本ととても良く似ていることを・・・もしかしたら先史時代から精神の隣人だったかもしれないと、そう感じた。

日本でも馴染みのある「ダニーボーイ」、「サリーガーデン」、「夏の名残りのバラ」など心に浸みるアイルランドの伝統音楽を今日の主役、Notes of Northがフィドル(バイオリン)、ティンホイッスル(笛)、バウロン(太鼓)、ピアノで躍動感あふれる熱い演奏を披露し、観客の心を奪ったことは言うまでもない。さらにたった4人のグループなのに、その存在感が半端なく、それも私たちを驚かせた。
特にティンホイッスルの按田佳央理さん(フルート奏者)のジャンルを越えての高い技術の先にあった喜びを発散する美しい音色に涙するひとが続出。会場の空気が一気に変わり、歓喜の声が漏れ始めていた。

なぜこれほどまでにアイルランドの音楽がみんなの心を揺さぶり、涙させるのだろうか。私なりに考えてみた。それは両国には、単に「モノに魂が宿る」とする心ではなく、「モノに宿る魂が常に動いている」と信じる心があるからだと思ったのである。
一言でいえば「アニミズム」への共感と言ってもいいかもしれない。

つまり生きとし生けるもの、有機物はもちろんのこと、石ころなどの無機物にも、魂が宿っていて、それが絶え間なく生命的な活動(アニメイト)をしていると信じられてきた精神と信仰がアイルランドの音楽を通して、私たち日本人も同じものを持っていると感じとったからではないだろうか。

もちろん異界のモノたちへの親近感、その根底にあるアニミズムはアイルランドと日本の友好関係にも一役買っている。
ご存知のとおり、日本のお盆とよく似ている異世界から霊や先祖が返ってくるとされるハロウィーンである。悪い霊にいたずらをされないよう、カムフラージュのために自分たちも異界の存在に仮装する風習だ。
ともに精霊信仰や自然信仰といった考えを根底に持つ両国に、国境はないと納得した夜だった。

Kazuko Tanaka

レポート

Kazuko Tanaka