鈴木 康広 雪の消息|残像の庭 鑑賞レポート

鈴木康広 雪の消息|残像の庭

札幌文化芸術交流センター SCARTS(札幌市民交流プラザ1-2階)
アート

2019 08/17

2019 09/16

UP:2019/08/20

溶ける、滴る、舞い散る、浮かぶ。
水の惑星、地球上で生きている私達の周りで当たり前に起こる自然現象。アートとの関連性はどこに?と疑問に思う人もいるかもしれない。だが、アーティスト 鈴木康広氏の北海道初の個展『雪の消息|残像の庭』の展示作品を鑑賞すれば、その疑問は一瞬にして解消される。鈴木氏の手にかかった作品を通じてフォーカスされる自然現象は、現実的であると同時に心を虜にさせる神秘的なエネルギーと、どこか秩序ある波動を発していた。中でも有料鑑賞エリアに展示されている新作の一つ『氷の人』は印象深い。この展示エリアは、ほぼ暗闇。作品として光を発してるものもあれば、作品にスポットライトが当てられているものもある。そこに光あれば漆黒の影も現れ、そのシャドーも作品の一部として何かを訴えかけてくる。作品名の通り『氷の人』は人の形でできた氷。時の流れと共に溶けて変形する様子は、詩的な儚さを醸し出しながら何か哲学的に考える力を与えてくれる。静謐な展示空間の中、しばらくの間じっとみつめて耳を澄ます。刻々と溶けゆく氷は水となり、氷の人が立つ下部に滴り落ちていく雫の音が一定の間隔で微かに響いていた。水音の響きが、みずみずしく美しい余韻を残している。
作品を鑑賞していくうちに、アーティスト鈴木康広氏は一体何者だろう⁈と考える私。
科学者、哲学者、発明家、手品師の顔をも持ち合わせる多面体なアーティストなのかも⁈と感じて止まず、各々の作品の前で足が止まり何度も感じて考える。
鑑賞後SCARTSを後にした私の脳裏には不思議にもレオナルド-ダ-ヴィンチのことが浮かんだ。

 

Maki Tanaka

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Maki Tanaka