神田日勝のイメージとギャップ

神田日勝回顧展 大地への筆触

北海道立近代美術館
アート

2020 09/19

2020 11/08

UP:2021/03/20

そもそも私が神田日勝の存在を知ったきっかけは、2019年に放送された朝ドラ「なつぞら」だった。吉沢亮演じる山田天陽が神田日勝のモチーフとなっており、ただただカッコいいなぁと思いながら観ていた。有名なのは絶筆となった馬の絵画だが、本展を見て、日勝の絵画作品に対する私のイメージは覆された。

印象に残ったのは、1960年代後半の作品群だった。会場の作品は時代順に展示されていたが、この時代のエリアに入ると雰囲気がガラリと変化した。今までの田舎的な画風とは違う鮮やかな色彩が目を引き、明るくエネルギッシュだ。白を基調とした背景に色鮮やかな画材が置かれている画室や、強烈なピンク色の床と壁に、中央に集中的に置かれた画材を描いた画室などの2つの絵画は非常に鮮烈だ。新聞や広告のコラージュを使ったポップな作品は洋の世界へと私を誘い、日勝の描く人物と釣り合わないのが逆に面白い。「ヘイと人」は、素朴な少年と木製の塀とは対照的に、原色の鮮やかな広告、女性のヌードポスターがひどく眩しい。ベトナム戦争にまつわる広告も、心にチクりとくる。

そして何よりも、「晴れた日の風景」に代表される激しい筆触の作品は、私の心を震わせた。うねるような筆捌きに、眼に焼き付けられるかのような色の荒々しい奔流。作品のサイズが大きいので会場ではかなり間隔をあけて展示されていたが、そうでもしないと鮮やかな色に目が追い付かなくなる。遠くから見ると全体像を容易に把握できる一方、近くで見ると厚塗りで絵具がキャンバスから浮き出ており、思わず会場で驚きの声を上げそうになった。日勝の激しい心の内を垣間見せるような作品だったと私は思う。

ドラマの天陽くんはストーリーの登場人物の一人なので、穏やかな中に強い意思を持つ農民画家として見せられていた。だが、神田日勝の絵を実際に見ると、同時代の美術潮流を受容しつつも、個性的な表現を好む鮮烈な美術家であり、ユニークで面白い人物だと思った。

チャーリーNH4⁺

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チャーリーNH4⁺