砂澤ビッキ展を観て

砂澤 ビッキ -樹- 展

本郷新記念札幌彫刻美術館札幌芸術の森美術館
アート

2019 04/27

2019 06/30

UP:2019/07/31

 美術館で<樹鮭>という作品に対面した時、こわいと思った。しかし、それは気味が悪いというのではなく、「畏怖」というべき感情だ。この作品がもたらす独特の印象は何処から来るのだろうか。
 「表現とは、木の特性を無視したり捻じ曲げたりすることではない」と、砂澤ビッキは語っている。こわさの正体は、この彫刻家が木の中から、自然の精を取り出していることから来るのではないか。大自然を前にして感じる畏怖を、一つの作品の中に私は感じたのだ。
 だが、人は自然を前にして、ただ畏れ慄くばかりではない。それは、安らぎや悦びも与えてくれる。<午前三時の玩具>と題された作品群は、まるで、昆虫好きな少年の夢の中に生息しているようで、本当に楽しい。
 砂澤ビッキは、一片の木から、大自然が持つ全ての要素を、私たちに取り出してみせてくれる。作品の大小や形態を問わず、全ての作品に、自然を前にした時の「畏れと悦び」が溢れている。

朝日泰輔

レポート

朝日泰輔