札幌映画サークル主催上映会 映画「丹下左膳余話 百萬両の壺」

丹下左膳餘話 百萬兩の壺

札幌エルプラザ
映画

2021 02/06

UP:2021/02/22

HPによると、札幌映画サークルは1963年に生まれた非営利の映画鑑賞団体。少なくとも年に6回は上映会を開催して、「洋画シネマ・クラシックス」や「日本映画名作祭」といった企画上映や、弁士を呼んでの名作無声映画の鑑賞会などを行っているとのこと。本当に映画がお好きな方々が集まっていらっしゃるのだなと思います。その札幌映画サークルが2月6日に開催した上映会に行ってきました。鑑賞したのは、1935年制作の「丹下左膳余話 百万両の壺」。日本映画の名作として知られる作品です。

この映画の監督は山中貞雄。戦前に24本の作品を監督して天才と謳われますが、1937年制作の「人情紙風船」が封切りされたその日に召集令状が届き、中国へ出征。翌年彼の地にて、28歳の若さで戦病死します。その日記には、「人情紙風船が山中貞雄の遺作ではチトサビシイ。」と記されていました。現在彼が監督した作品で、上映可能な形で残っているのは3本のみ。その中のひとつが、今回上映された「丹下左膳余話 百万両の壺」です。

「髷をつけた現代劇」と呼ばれた山中の時代劇ですが、この作品でも随所に、監督のモダンで卓越した感性を感じます。百万両の隠し場所の地図が塗り込まれた壺をめぐるストーリー展開のテンポの良さ。コメディ映画を思わせるユーモラスな場面では会場から笑いが起き、登場人物の少年が家出するシーンでは寂寥感に胸を締め付けられるような思いにさせられる。そして、隻眼隻手の剣豪、大河内傳次郎演じる丹下左膳の豪快な殺陣では、心のなかでヤンヤの喝采。とにかく映画の面白さがいっぱい詰まった作品で、傑作という評判に偽りなしでした。

最近の日本映画界では、あるアニメ映画が歴代興行収入記録を更新したといった話題がありました。それは結構なことですが、こうした過去の名作・傑作にも、もっとスポットライトが当たって欲しいと切に思います。それは、ただ古いから大事にしようということではなく、とにかくこんなに面白い作品が眠っているのがもったいないという気持ちです。山中貞雄が忘れられるのはチトサビシイ。「百万両の壺」を上映してくれた札幌映画サークルに感謝するとともに、次回何を上映してくれるのか、今からとても楽しみです。

鑑賞データ
日時:2021年2月6日
場所:札幌エルプラザ
主催:札幌映画サークル
上映作品:「丹下左膳余話 百万両の壺」監督 山中貞雄

朝日泰輔

レポート

朝日泰輔