札幌交響楽団9月定期演奏会 鑑賞レポート

札幌交響楽団 第630回定期演奏会

札幌コンサートホールKitara
音楽

2020 09/25

2020 09/26

UP:2020/10/07

札幌交響楽団の定期演奏会が、この9月に再開されました。コロナウイルスの感染拡大によって、当初の曲目と出演者が変更になったのは残念なことでしたが、「withコロナ」におけるコンサートを考える上で、とても良い内容だったと思います。

今回のコンサートで演奏された曲は、どれも比較的小さな編成のものでした。それはおそらく、舞台上での密を避ける狙いがあったのだと思います。しかし、確かに地味ながら、どの曲も親しみやすく美しい旋律の作品ばかり。苦肉の策と思わせながら、隠れた名曲を並べ、聴衆に新しい曲の魅力を提示するという、実は大胆な選曲だったと言えるでしょう。

代役で指揮を務めた広上さんは、いつもながらの聴かせ上手で、どの曲からも豊かな表情と美しさを引き出します。その指揮に応える札響は、以前よりも響きがふっくらと優しい印象を受けました。これは、久しぶりの定期演奏会という喜びの現れだったのかもしれません。そして、協奏曲でピアノの独奏を務めた伊藤恵さんは、矛盾を承知で言いますと、円熟の瑞々しさといった演奏で、客席の耳と心を満たしてくれました。首席指揮者であるバーメルトさんが来日出来なかったのは残念ですが、改めて、日本人演奏家の水準の高さに感動を覚えます。

コロナウイルスの感染拡大によって、いたるところで社会の歪が顕になったということ聞きます。そうした現状で、脳天気だとお叱りを受けるかもしれませんが、こと今回の札響定期演奏会では、普段見過ごしがちな音楽の美しさと、わが国の音楽界の充実ぶりが再認識された言えるでしょう。どこまで続くか分からない「withコロナ」のなかですが、いろいろな意味で、希望を与えてくれた演奏会でした。

鑑賞データ
日時:2020年9月26日
場所:札幌コンサートホールkitara
曲目:
シューベルト 「ロザムンデ」序曲
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第2番
ストラヴィンスキー 管楽器のための交響曲
シューベルト 交響曲第5番
演奏:
札幌交響楽団
指揮 広上淳一
ピアノ 伊藤恵

朝日泰輔

レポート

朝日泰輔