大島渚監督「儀式」

『儀式』

映画
その他映画

1971 06/05

UP:2021/07/14

今年、4K修復された大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」と「愛のコリーダ」が、映画館でリバイバル上映されました。この監督の大ファンである私としては、それはそれで嬉しい反面、もっと他の作品が観たいというのが正直なところ。特に、最高傑作だと信じてやまない「儀式」が、久しぶりにどうしても観たくなり、ついにDVDを購入してしまいました。

この作品は、ある一族の冠婚葬祭を通じて、日本社会の根底に残る家父長制や、戦後社会そのものを寓意描いたもので、その内容の社会性・政治性とともに、それらを表現した見事なセットや撮影と演出で、海外でも評価の高い一作。

圧巻は、主人公の結婚式のシーン。家長である祖父が決めた結婚なのですが、式当日に花嫁が失踪する事態に。しかし、その祖父の一言で、政財界の大物を集めた式は、「花嫁がいないということ」以外は滞りなく進められます。神前での三々九度に、披露宴でのケーキ入刀やお色直し、全て花嫁不在で執り行なわれます。参列者も、誰一人異論を挟まず、粛々と式は続きます。その滑稽さを通り越したグロテスクさは、時代と社会を鋭く捉えた、大島渚の真骨頂と言えるでしょう。

DVDの解説には「戦後日本社会を総括した一作」とあります。これは、この作品について端的で至極適切な評価だと思います。では、総括された社会は何か変化したのか。この作品をリバイバルするのは、正に今、ではないでしょうか。

DVD鑑賞データ
作品:「儀式」
監督:大島渚
出演:河原崎建三 賀来敦子 中村敦夫 佐藤慶 小山明子 他
発売販売:紀伊國屋書店

朝日泰輔

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