ポスターの世界観に魅せられて

ロマンスドール

札幌シネマフロンティア
映画

2020 01/24

UP:2020/04/12

街中で見かけた一枚のポスターが頭から離れない。それは地下鉄の改札に向かう道の壁面に貼られていて、スモーキーブルーの空気に包まれた画面の美しさに思わず足が止まった。人気俳優の男女がベッド上で横たわり寄り添っている映画広告だった。

タイトルはロマンスドール、タナダユキ監督自らが脚本化。ポスターの雰囲気から、よくある恋愛ものかなと思いながら監督の今までの作品の着眼点や感性を思い出し、コンサバティブな物語ではないなと推し測った。タイトルに入ったドールの文字がやけに気になった。キャストにも目を走らせる。注目を浴びている実力派揃いだ。ポスターは見る広告。意識すれば一瞬に視覚を通じて情報が入ってくる。その絶大な力に驚きを隠せない。

映画を観る時、事前にストーリーを詳しく検索しない。まして恋愛ものは性に合わず滅多に観ないが、それらが覆される出来事が起きた。地下鉄に乗車してドア横に身を落ち着かせ、すぐにネット検索した。何々!主人公はラブドール造形士。際どい題材が目に飛び込んできた。興味が高まり公開初日に映画館へ急いだ。

エンドロールを眺めながら幾つものシーンを思い起こした。例えば、女性監督と感じさせないオッサン目線で展開する物語、性と芸術の多様な関係性、際どい題材を映画という芸術に昇華させた高度な技術、日常から立ち上がるリアリティと腹上死や一目惚れするファンタジーが見事に溶け合っているところ。タナダ組に集結した優れた俳優・スタッフ陣の力のなせる業である。

監督が同名小説を発表した10年前は、際どい題材だけに社会や世間が懸念を抱いたのか映画化されず、ずっと温めていたようだ。徐々に時代も変化し、都内でのラブドール展示会開催時に、女性がそのクオリティの高さに美の対象として鑑賞していたことを見て価値観が一変したと確信し、企画が急進行して、ようやく映画化できたのだ。

作品誕生までの秘話にブラボー!!

Maki Tanaka

レポート

Maki Tanaka