『オペラガラコンサート/道化師』インタビュー

教文オペラプログラム 北海道二期会創立55周年記念公演 オペラ ガラ・コンサート、歌劇『道化師』

札幌市教育文化会館
オペラ特集

2019 11/23

2019 11/24

UP:2019/11/23

『道化師』はオペラの中でも観やすい作品。昼ドラ感覚で観て欲しい。

山際:役どころについて聞きたいと思います。どのキャストに見せ場のシーンってあると思うのですが、岡崎さんは今回、カニオという役を演じられますね。先ほどもお話があった、奥さんの不倫を知ってしまう、オペラ一座の座長の役です。「ここは!」という見せ場を教えてください。

岡崎:カニオが葛藤の中でどう変わっていくかを見て欲しいです。カニオは、自分の妻であるネッダのことをすごく愛しているのですが、その妻の不倫を知ってしまう。元々感情の起伏が激しい人間なのですが、怒りをどこにぶつけたらいいのか葛藤します。

しかも、不倫を知ったその日、カニオは自分が率いるオペラ一座で劇をしなければならない。ただでさえ葛藤の中で舞台なんてできるのかというところなのに、劇には当の奥さんのネッダも出演しています。劇の中でネッダが「永遠にあなたのものよ」っていう台詞を言うのですが、それが浮気相手に実際に言った言葉と同じだったりして、どんどんどんどんおかしくなっていっちゃう。本当に昼ドラと同じように、「どうなるの?どうなるの?」っていうワクワクだけで見てもらって全然構いません。「気付かれてるよ!」「バレてるよ!」みたいな。

一同:爆笑

山際:心得て見させていただきます。次に、内田さんは、いつもイケメン役担当と聞いたのですが…

内田:いやいや、いつもはキャラ物担当なのですが(笑)、『道化師』では珍しく、ネッダの恋人のシルヴィオを演じます。僕はバリトンなのですが、バリトンが二枚目の役をやるのは本当に珍しいんですよね。他の作品だと、ヒーロー役やソプラノの恋人役は大体テノールが演じます。バリトンは、テノールの役柄を隣から見ていて「くっそー」って言っている役が多いのですが、今回のシルヴィオは二枚目の役なので、楽しいです。嬉しいです。

一同:爆笑

岡崎:他の作品であれば、テノールには必ず「愛の二重唱」があるのですが、『道化師』ではそこの部分をそっくり、バリトンのシルヴィオが持っていっています。

内田:岡崎さんが演じるカニオが葛藤を表現するのに対して、僕が演じるシルヴィオはすごく一途です。ネッダのことが好きで好きで、2人で一緒になろうねっていう約束を10分間かけてこぎつけます。コテコテですね。『道化師』では、カニオが人間として壊れてしまう様が描かれるのですが、シルヴィオは、その壊す要素です。

岡崎:これは、もう内田さんにうってつけの役です。歌も、見栄えも、殺すまでに嫉妬する良い男じゃ無いとダメなんです。昼ドラとかでも、「こんな良い男だったら浮気してもしょうがないよね」っていうキャラクター、いるじゃないですか。

内田:今日は何かおごればいいのかな?

一同:爆笑

山際:普通はテノールが演じる役どころをバリトンが演じたりしたりとか、そういうことを知ると、初心者の私たちも楽しく観れますよね。「あ、珍しい作品なんだー」って。

内田:『道化師』は、珍しいのと同時に、非常に観やすいオペラです。上映時間も、普通のオペラなら2時間半とか3時間とかあるところですが、この作品は1時間ちょいです。ドラマの初回スペシャル版と同じくらい。

岡崎:珍しいといえば、劇中劇があるオペラは『道化師』しかありません。合唱の人たちが村人役で、劇中劇を観客として観ています。迫真の演技がすごいねえって言いながら観てるうちにだんだんだんおかしいな、ってなり、最終的には劇を見ている村人の前で、カニオはネッダとシルヴィオを実際に殺します。その現場を生で見て驚く村人の目線が、みなさんと一緒なんです。

内田:音楽の作り方も特徴的です。これより前の時代だと、台詞を乗せるものとして美しい音楽があるですが、『道化師』のような現実主義のオペラでは、音で感情を表現します。ですから、観ている方も、美しい音楽を聴かされているのではなく、ハラハラ、ドキドキとしたようなほとばしる感情が歌や曲になっているので、そういう意味でも観やすいと思います。

岡崎:かつてはある程度決められた音の作り方があって、そこに歌詞を載せるだけだったのですが、それに比べると自由な音楽の作り方だと思います。自分たちの気持ちを乗せて音楽にするという意味では、ロックや歌謡曲に近いのかもしれません。

こういう観やすさがある『道化師』をきっかけにして、他のオペラってどんなのがあるんだろう…っていう風に興味を持って、どんどん幅を広げてもらえたら、僕たちはそれで幸せです。


岡崎正治(おかざきまさじ)

イタリアオペラを中心に主役を演ずる北海道を代表するテノール歌手。東京在住中にはプッチーニ「ボエーム」のロドルフォ、ヴェルディ「リゴレット」の マントヴァ他にて出演、道内ではプッチーニ「トゥーランドット」カラフ、ビゼー「カルメン」ホセ他多くのオペラに出演。2012年1月に仙台で公演されたドニゼッティ「愛の妙薬」(ネモリーノ役にて出演)・2015年1月に公演された北海道二期会50周年記念ヴェルディ「アイーダ」(ラダメス役にて出演)・ 2019年3月に公演された札幌文化芸術劇場hitaruのこけら落とし公演北海道二期会ヴェルディ作曲オペラ「椿姫」(アルフレード役)において共に音楽の友誌、北海道新聞等紙上にて絶賛される。また札響コンサートマスター大平まゆみを代表として「オペラファクトリー北海道」を設立。オペラを短縮・小編成・小会場で身近で楽しんで頂きたいという願いで、現在までに3演目(カルメン・トスカ・道化師)14自主公演を行う。1995年度新人音楽会にて、札幌市民芸術大賞・ 音楽家協会特別賞を受賞。平成13年度・第11回道銀芸術文化奨励賞受賞。現在、札幌大谷大学声楽科非常勤講師、北海道二期会会員、札幌音楽家協会会員、オペラファクトリー北海道副代表、Sound CreationTeaMS_Z(ティームズゼット)取締役。

内田智一(うちだともかず)

国立音楽大学声楽科卒業。声楽を砂川稔、小山健文、角田和弘、渡辺誠の各氏に師事。

2003年より渡伊。ミラノ市で「道化師」シルヴィオ役等、数々のオペラに出演。

2006年に帰国してからはオペラユニット ザ・レジェンドのメンバーとして全国各地でコンサートを開催。その本格的でありながらもクラシックの概念にとらわれないパフォーマンスが話題となり2011年「永遠の0」でメジャーデビュー。

2017年オペラ『石見銀山』、2018年ハイブリッドオペラ『フィガロの再婚』を発表、オペラの普及活動にも力を入れている。


公演情報

教文オペラプログラム 北海道二期会創立55周年記念公演

オペラ ガラ・コンサート、歌劇『道化師』

日 時:2019年11月23日(土祝)24日(日)14:00開演

会 場:札幌市教育文化会館 大ホール

指 揮:横山 奏

演 出:十川 稔

管弦楽:カンマーフィルハーモニー札幌

公演情報の詳細は下記URLをご参照ください。

https://www.kyobun.org/event_detail.php?id=9209


 

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