『オペラガラコンサート/道化師』インタビュー

教文オペラプログラム 北海道二期会創立55周年記念公演 オペラ ガラ・コンサート、歌劇『道化師』

札幌市教育文化会館
オペラ特集

2019 11/23

2019 11/24

UP:2019/11/23

札幌の声楽団体、「北海道二期会」さんが、オペラ・ガラコンサートと、レオンカヴァッロ作曲オペラ「道化師」の2本立てで、札幌市教育文化会館にて公演を行います。公演に先立ち、「道化師」にご出演の岡崎正治さん、内田智一さんにお話を聞きました。お二人とも軽やかな語りで、今回の作品の聴き所を教えていただきました。


インタビュアー/スタッフ:石黒由香、千葉英樹、山際愛

インタビュー受け手:岡崎正治さん、内田智一さん


虫の「音」ではなく、虫の「声」を捉える感性を、オペラにミックスしていく

内田智一さん(左)と岡崎正治さん(右)

山際:今日はよろしくお願いします。最初の質問は、「おふたりはなぜオペラを選んだのか」ということです。これはアートコミュニケーターのみんなが知りたがっていることなのですが、ミュージカルでも歌曲でもなく、演技をしながら歌わなければならないオペラを選んだのは、なぜでしょうか?

岡崎:色々な選択肢の中から選んだ訳ではなく、僕は最初からオペラでしたね。歌を習い始めるきっかけがオペラを観たことだったので。

内田:僕もそうですね。子供の頃からずっと歌を歌うことが好きだったのですが、大学進学の時に先生から音大の存在を教えてもらったんですよね。「内田、音大受けてみるか」と。それで、音大を受けると決めた時に初めてオペラ歌手の歌を聴いたのですが、マイクを通さない、生の声に感動して、そこでオペラの虜になりました。きっかけがそれだったので、ミュージカルとかではなくて、最初からオペラというものをやりたいな、と思いましたね。

山際:なるほど。オペラって初めての人には敷居が高く感じますが、一度何かのきっかけで生で聴くと、声の迫力や表現力に衝撃を受けるのでしょうね。これは私もよくわかります。

次にお聞きしたいのは、モチベーションを持続する方法です。アートコミュニケーター の中でも絵や音楽を作っている人がいるんですけど、長く続けていると、心が折れそうになる時が出てくると思います。おふたりは長くオペラを続けていらっしゃいますが、心が折れそうな時にどうやってモチベーションを立て直しますか?

岡崎:オペラをやっていて心が折れることは僕はないですね。

山際:すごい。

岡崎:他のところで折れているので(笑)。心が折れる時というのは、自分の技術的な未熟さや、やらなければいけないことができない時だと思うのですが、僕はとにかくオペラが好きなので、オペラが嫌いになって心が折れてしまうことはまず無いですね。

内田:僕も基本的にオペラのことで心が折れたりはしないのですが、イタリアに留学した時に一瞬折れそうになったことがあります。イタリア語を必死で勉強して単語の意味を調べている横で、イタリアの人たちの日常会話が聞こえてくるんです。しかも、イタリア語ってすごく響く音で喋るんですよ。なので、普通のおじさんもこんなに良い声で日常会話をしているのに、絶対にかなわないって思う瞬間があるんですよ。

ネイティブの人とどう対等に渡り合うか、というのは今でも頭を使っています。テクニックでカバーできることもありますし、日本人だからできることもあります。日本人は、表現の仕方が非常に幅広い。例えば、海外では虫の「音」というところを、日本人は虫の「声」と言います。捉え方が違うんですよね。虫が発する音をただサウンドとして聞くのではなく、風情とか情緒とか、そういうものを聴くんですよね。こういう、日本人ならではのものの捉え方をオペラにミックスしていく面白さはあります。

ストーリーは単純明快。ネットで10秒調べるだけで楽しめる。

山際:アートコミュニケーターの中には、まだオペラを聴いたことがないという人が結構いるのですが、そういう人も今回のインタビューに関わる中で興味を持って、初めてチケットを買ったりしています。そういう方々に、オペラの楽しみ方や、「こういうところに注目したら面白いよ」というようなヒントをいただけますか?

岡崎:まずは、オペラを難しいものだとは思わないでいただきたいですね。オペラって日本語じゃないものが多いし、クラシック音楽に馴染みがない人もいるので、来づらく感じる人もいると思います。でも単純に、「演劇」+「美術」+「歌」だと思って欲しいです。マイクなしの生声で、伴奏も生演奏。そういうものを楽しんでいただきたいなと思います。

とはいっても、実際にオペラを観てみると、物語の内容が知りたくなると思うんですよね。なのでおすすめは、事前にちょっとだけ調べてみることです。別に難しいことを調べる必要はなくて、ネットで10秒くらい、どんな話なのか調べてみる。

調べるとわかるのですが、オペラのストーリーってそんなに小難しいものじゃありません。例えば今回の『道化師』は、平日のお昼にやってる昼ドラと一緒です。オペラ一座の話なのですが、一座の座長のカニオに奥さんがいて、その奥さんが村の若者と不倫をしたことが発覚し、最終的に奥さんと不倫相手を殺してしまう。昼ドラと同じ愛と憎悪の物語です。昼ドラを好きな方多いと思うのですが、あれは人ごとだから面白いんですよね。オペラも同じように、人ごととして観ることができます。もちろん、政治が絡んだりして難しい作品もない訳ではないですが、大多数はわかりやすいものです。その中でもこの『道化師』は単純明快で、本当に観やすいです!

(2ページ目に続く)

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